苦悩の果てに来たる
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もしくは迂回。とにかく、捕まえられないんです。視野が広い」
妖精さんが囁くのだ。比喩ではなく。艤装に乗り込んだ妖精さんが、あれこれと助けてくれる。死角のない、正確な射撃は彼女たちが実現している。
新城に教えているというより、完全に愚痴だった。摩耶に煽られるとなれば、西田でなくとも熱くなるだろう。その辺の信頼感はある娘だった。そして、古鷹に側面から仕留められる。新城にしても、悔しいだろうと思えた。摩耶の笑顔を思い出して、いらっとする。
「まず、駆逐艦を狙え。彼女らなら装甲を抜ける」
だからではないが、助言していた。新城とて、後輩が可愛いという気持ちはある。西田は顔を顰めた。やはり、抵抗があるらしい。
「深海棲艦は、むしろ強力な艦ほど人間に近い」
西田は崩れ落ちながら、ため息を吐いた。何か繰り言を呟いているが、独り言と流す。
「どうしてもというなら、大隊長殿に相談することだ」
そろそろ、動いてもらわなければならない。西田は驚いたようだ。
「あの人は歴戦だぞ? 元は戦車乗りで、東海防衛にも参加されている」
だからこそ、戦車を無為にした深海棲艦と艦娘を嫌っている。ついでに流された先の猫のことも。周囲にはやる気のない上官だと思われていた。
「まあ、あんまり情けない姿は見せられないですからねぇ」
しまりのないいつもの笑顔を見せて、西田は仕事に戻った。新城は眉を上げた。後で、猪口にも話を聞こうと決める。
自分の席に戻って、広げた資料を改めて眺める。本土との連絡は、限定的ながら回復した。だが、陸軍である限り、海軍からの情報はほとんど流れて来ない。前線の一大隊の元となればなおさらだ。足りない材料では、結論は得られない。
自分と同じような懸念を抱いている人間もいるはずだ。しかし、共有出来る存在が周囲にいなかった。新城もあえて口にしない。混乱しかもたらさないからだ。
新城が気になっているのは、作戦の始まる以前のことだ。そこで集められた情報に、深海棲艦の移動が確認されていた。
何度も見直したが、瑕疵のない情報だ。任務に当たったのは、横須賀、佐世保、呉の各鎮守府。今日の安定をもたらした、本物の海軍だ。作戦に参加した、国家に飼われた提督とは違う。
沖縄の海で垣間見た、艦娘たちの戦闘を思い出す。美しく、冷酷で、容赦のない、徹底した殲滅戦。新城が踏んだ沖縄の大地は、文字通りの更地だった。戦艦や空母の威力というものを、これ以上ないほど実感する光景だった。
彼らはそんな存在を、個人という単位で率いているのだ。提督を衆愚化させるのは、苦肉の策だったのだろう。今回、やっと是正に動いたわけだが、思いっきり出鼻を挫かれた形だ。霞が新城にした警告も、この状況に基づいている。
その当たりの事情も関係しているのか、アリューシャンを攻められた深
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