苦悩の果てに来たる
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る。
要約が過ぎるが、意味はわかった。海軍の現状が、端的にわかりやすく示されている。
「ショックだったし、認められなかった。恨んだこともある。でも、別の提督のとこから雷が来たの」
彼女は提督にこう言われた。
『お前といるとダメになる』
幼い少女相手に何をしているのか。だからこそ深刻なのかもしれないが。
霞は腹を抱えて、笑い声を噛み殺していた。新城は疲れを自覚した。
「冷静になれた。それで、色々見えた」
新城は頷いた。彼女の懸念は理解している。だが、大隊長も考えている。
霞は新城の感謝を受け取って、満足したように頷き返した。そして少し、迷うような、怯えるような表情になった。新城は無言で促す。霞は躊躇ったあと、ぽつりと口にした。
「でもね、今度は改めて思ったの。私のしたことは、無駄だった、余計なことだったんだって。ここにいるのも、当然じゃない?」
新城はいつものように、軍人として完璧な態度で答えた。
「君の教導の価値は、その提督が決めるだろう」
新城は冷徹に言った。
「君は義務を果たした」
新城と霞は敬礼を交換し、別れた。新城は陸軍の。霞は海軍式だった。新城はそこで見たものを忘却した。
まだ何も決断していない。自分に何が出来るとも思わない。それでも軍人である以上、行動しなくてはいけない。新城は押しつけられた仕事を終わらせたあと、毎夜資料を広げた。
見落としていることがあるはずだ。不安がどうしてもこびりついて離れない。そのことが新城を駆り立てていた。目を背けたいことが多すぎるのだ。新城の理性が、その一つひとつに値札をつけていく。
明らかな逃避であった。だからこそ没頭した。しかし、気分を変えることも必要だった。煙草とコーヒーを補給した。西田が目に入る。ずいぶんと久しぶりな気がした。
「どうだ? 調子は」
西田は苦笑した。しばらく放っておいたので、恨んでいるのかもしれない。他の小隊を巻き込んでからは、統裁官も務めていない。こちらに目線を寄越さなかった。
「負けっ放しです。今度は猫も入れようって話になりました。俺たち、剣虎兵ですから」
予想していた通りだ。撃ち合いで、人間が勝てるものではない。殴り合いに持ち込んで、何とか互角。結局、物量に押し潰されるが。
西田も考えているのだろう。腕を組んで唸り始めた。
「中尉殿は南へ行ったことがお有りなんですよね?」
今度は新城が苦笑する。素直なのはいいが、頼るのが早過ぎる。
「沖縄にな。艦娘が更地にしたところを散歩した。あちこち見て回ったが、暑かったな」
期待した答えが聞けそうにないので、西田は落胆したようだ。思ったよりもやられているようだ。もう少し、話を聞いてやることにする。
「摩耶も古鷹も、どんどん巧くなってます。摩耶が煽って、古鷹が援護、
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