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提督はただ一度唱和する
大いなる誤算
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なものだ。砲を抱えた女性形というだけで、深海棲艦を思い出させる。よく見れば違いはあるのだが、大多数にとっては些細なものだ。特に、女性からは受けが悪い。理想的なまでに、男の願望が詰まった存在だからだろう。まあ、仕方ないのではないかと、男性全般は関わりを避けている。
「出来るなら、資材も手に入れたいが・・・・・・」
 西田には、そこで新城が悩む理由がわからない。あっけらかんと言い放った。
「艤装妖精さんに頼めばよいのでは?」
「なんだそれは」
 陸軍としては、艦娘以上に関わりを避けたい存在である。とにかく意味不明で、戦争を真面目にやる人間ほど、発狂したくなる。幼児ほどの知恵しかないかと思えば、政治的に完全な勝利を陸軍から勝ち取る程度には老獪だ。新城も彼女らについて調べようとすると、どうしようもなく、目が滑る。
 よって、答えようとした西田を制した。代わりに、約束する。
「弾薬は無理だが、燃料は何とか誤魔化そう。頼んだぞ」
 面白いな。西田は思う。艦娘に関わると、この人はこんなに面白くなるのか。新城は彼の視線の意味に気づいていたが、無視した。今さら、手加減を誤るとも思えない。それぐらいは信頼していた。誤ったときは、後悔させるだけだ。損のない取引だ。
 本当は現実を教えて、諦めさせるつもりだった。摩耶を挑発し、激発させる算段だった。古鷹がいれば危険はないだろうと思った。これ以上、艦娘が立場を悪くする状況を、彼女なら許しはしないだろう。目撃者がいなければ、穏便に済んだ。恩を売り、心を折って彼女らから解放される機会だった。
 ところがこうなってしまった。偽善をなす誘惑から逃れられなかった。たかが一小隊と訓練したところで、大勢は変わらないだろう。下手な希望を持たせるだけだ。むしろ悪化する恐れすらある。
 彼女らが兵士として、未熟以前の問題であることは、これまでの観察で理解している。戦場では、無能こそが最も憎まれるのだ。
 これまでの、どこか偏見の混じった排斥ではない。本物の侮蔑に晒されるかもしれない。それでも。
 目の前の西田を見た。こいつも諦めなかった。たかが少尉の分際で、仕事の合間に艦娘の資料を広げている。熱心なことだ。自分の力で世界を変えられると、誤解しているのだろう。若さのなせる業だ。自分は、幼いとすらいえる時分に失ってしまった。純粋に羨望の気持ちが込み上げる。
 何で、こんなにも足りないものだらけなのだろう。恵まれたとすらいえる生い立ちで、何故。
 原因に突き当たる前に、新城は全てを遮断した。それだけは、新城といえど耐え難いのだ。それだけは。
「一月もすれば、海上封鎖と包囲が終わる。後は干からびた深海棲艦に止めを刺すだけの簡単な作業だ。僕らは、ただ突破されないようにだけすればいい」
 機会をくれたのかな。西田は好意的に解釈したが
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