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提督はただ一度唱和する
大いなる誤算
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復についても、新城は詳しかった。概ね、軍での生活に新城は満足していた。
 だから、新城にとって彼のような存在の方が戸惑うのだ。
「コーヒーでも飲みませんか?」
 誰もいないと思っていた事務所に、不意に声がかった。新城は書類から顔を上げずに、一呼吸置いた。目だけで睨む。
「西田か」
 締まりのない顔で笑う若者には、新城にない愛嬌があった。マグカップを二つ掲げて、新城の返事を待っている。新城は無言でたっぷり彼をいじめてから、体を起こした。この裏切り者めと、思っている。奇特なことに、新城に懐く数少ない士官の一人だった。士官学校時代の後輩で、多少面倒を見た覚えはある。同じ部隊に配属されるなり、新城の置かれた状況を見ても怯むことがなかった。今のところ上手くやっているため、新城も放置している。
 よくわからないというのが本音だった。
 正面から見返し、カップを受け取る。唇を湿らせて脇に置いた。熱い。
 西田は苦笑して、立ったままコーヒーを口に含んだ。どちらも何か躊躇うような間があった。
「居たのか?」
 曖昧な質問だ。新城にしては珍しい。西田の苦笑が深くなる。
「流石に気が咎めまして。面白い約束をしてましたね」
 新城の方は虫でも食わされたような表情だ。どこから入ったなどと聞くのは野暮だろう。気づかない自分が悪いのだ。大方、給湯室を経由してきたのだろう。
「どう思う?」
 どうもこの上官は言葉を惜しむところがある。やっと椅子に座ることを許されて、考える。ある種の叱責であり、共犯への誘いであることはわかった。報復の意味もあるかもしれない。今後の展開を憂い、艦娘の積極活用を具申したのは彼だ。その時のことは思い出すだけで顔が熱くなる。同僚や大隊長の冷笑に晒され、新城に慰められた。
 そう、あれは慰められたのだ。無知なまま高説を垂れた自分に、容赦なく正面から正論と現実を叩きつけた。厳しかったが、それでも、確かな言葉で現状の方が間違っているのだと、教えてくれたのだ。誰もまともに取り上げず、無視された意見を、きちんと大上段から粉砕してくれた。
 辛かったが、嬉しかった。自分が納得できる着地点を見つけられたからだ。勘違いかもしれないが、この上官はとにかく誤解されやすい。今さら自分一人増えたところで、迷惑にはならないだろうと、勝手に決めつけている。
 摩耶の気持ちもわかるな。先ほどまでいた、艦娘の去り際に見せた笑顔を思う。苦手だったが、可愛らしい娘だと思う。同じ人間を見出した共感があった。
「いいと思いますよ。大隊長殿はわかりませんが、みんなあなたになにがしか借りがありますからね。説得は可能でしょう」
「大隊長殿は大丈夫だ。軍隊ゴッコで目障りなバケモノが黙るなら、おそらく黙認されるだろう。もちろん、過信は禁物だが」
 艦娘の評価とはだいたい、そん
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