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提督はただ一度唱和する
鉄屑の勝利
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。駆逐艦イ級。山ほどという言葉が、これ程ふさわしい状況もない。砲撃を受けては崩れ、裾野を広げ、やがて走り出す。
「陸は陸軍さんに任せろ!! 橋が落ちる!! 河口入り口に扇展開!! いいか!? 逃げられた人たちを守るぞ!!」
「上流から友軍、戻ってきます!!」
「橋のあった位置を間接射撃させろ!! 絶対に通すな!!」
「誰か、陸軍さんの所まで!! 重巡じゃ威力が高すぎる!! 海上から支援します!!」
「あたしが行くわ!」
 港では既に食われている人が居る。必死に目をそらして、出来ることを、出来るだけ。
「迎撃艦隊は何をしてるの!? 航空支援は!?」
「住民を巻き込んじゃいます!! 許可が、許可が出ません!!」
「だったら沖で、削らせろよ!!」
「海底を移動しているのよ!! 魚雷も爆撃も届かない!!」
「はーい! 爆雷持ってる娘はこっちー! 沖に行っくよー!!」
 誰も命令を待たない。命令してくれる提督や上官を得たことなどないからだ。あの頃の経験と、生まれ持った性質だけを頼りに、使命を果たしてきたからだ。
「ダメ!! 近すぎて撃てない!!」
「対空装備持ってるやつ!! 何とか迂回して陸軍さんと合流しろ!! 弾幕張んの手伝ってやれ!!」
「無理・・・・・・!! 無理です!! 数が・・・・・・!! 数が!!」
「波打ち際を狙え!! とにかく数を減らすんだ!! 軽巡を先頭に突破する!! 重巡の三連射のあと、突撃!! 陣形、鋒矢!!」
「何それ?」
「知らない」
「面倒くっせーっ!!」
 砂糖菓子に群がる蟻か、フナムシの大移動か。対処出来ているとも、守り切れているとも言えない、完全な負け戦。それでも、まだ、最悪ではなかった。
「っ!! 敵駆逐艦からの反撃を確認!! 市街地から砲撃音も!! ヤバいよっ!!」
「貨物船食い尽くされます!! 敵艦こちらを指向!!」
「沖合いから魚雷!! 味方です!!」
「後ろは気にすんな!! 前だけ見ろ!! 突撃開始!!」
 深海棲艦に集られて真っ黒になっていた貨物船の残骸に、再び魚雷が突き刺さる。吹き飛ばされ、攻撃機会を失う深海棲艦。水上航行を始めた彼女らが、沖合いに向かい始める。黒い波となって。
「お願い!! 支援を!! 支援を寄越して!! もう無理!! 支えられない!!」
「市街地を瓦礫に変えれば足止めに!! お願い、戦艦の艦砲射撃を!!」
「深海棲艦の一部が市街地を突破!! 止められません!!」
「四の五の言わないで、早く!! 人が、人が食べられているのよ!?」
 避難要領は陸軍が策定した。だから、これは陸軍の作戦であって、海軍には関係ない。例え、その内容が海軍の支援を前提としていても。今現在、この場で展開する地獄は、上層部にとって、既に終わったことだった。
「砲が使えなき
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