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提督はただ一度唱和する
犠牲を糧に
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分、運んでこられました。弾薬もいっしょです」
 吹雪の泣き声が響いていた。千早が非難の唸り声をあげる。新城はしばらく黙った。
「ありがとう。吹雪駐在官。少なくとも、我々は助かった」
 新城はやっと敬礼した。投げやりでも、いい加減にはしなかった。
「ごめんなさーいぃ」
「伍長。彼女を休ませてくれ。僕は小隊を呼び戻す」
「取りあえず、荷物は開けて使えるようにしとりますんで」
 伍長は姪っ子を相手にするような様子で退室していった。ついでに、千早が新城を叱るように睨んで付いていく。
 新城は一人残された。

                     §

 深海棲艦の上陸が確認されたのは、小隊が全員戻った後、未明のことだった。未だに火を吹き続ける港で右往左往している姿を見届けると、新城は任務が達成されたものとして撤退を開始した。
 海でならともかく、陸上で狩猟採集生活を続けられるほど、彼女らも器用ではない。
 稚内から避難民を連れて撤退してきた部隊と合流し、旭川でようやく自分の大隊に戻った新城は、吹雪の面倒を押しつけられた。
 ちなみに、日本海側の駐在艦娘は、一部市街地防衛のために残ったらしい。新城は気にしなかったが、彼女らは統合幕僚本部直轄であり、駐屯する軍と行動するようには命令されていなかった。市民が陸路で避難する以上、漁船警護の名目で町を離れることも出来ない。
 可能な限り迎撃せよと言われた彼女らは、それが不可能になるまで任務を続けるのだろう。既に、本州との連絡は途絶えていた。
 説得に応じた艦娘は少ない。というよりも、彼女らも自分たちがやり切れるとは思っていなかったのだろう。貴重な重巡など、強力な艦娘ばかりが同行している。人混みから離れ、通夜よりも酷い雰囲気で蹲っている。
 彼女らは託されたのだ。きっと、避難民だけでなく、軍すらも護ろうとしているのだろう。そんな有様でも、彼女らは常に海側を意識している。
 ついでとばかりに彼女らの世話まで押しつけられた新城は、何食わぬ顔を装って近づいていく。
「残った艦娘と連絡は取れるか?」
「あぁ?」
 もう艦娘が軍人であるとは思わないことにした新城に、動揺はない。この頭からアンテナの生えた女子高校生は何といったか。スカートの短さは置くとしても、セーラーの下にシャツ位は着てもよいのではないか。
「君たちは深海棲艦の影響下でも通信が可能と聞く。残留した艦娘と連絡は取れるか」
「そんなもん、今さらどうしようってんだっ!」
 注目が集まるのがわかった。新城はだから何だという気分だった。
「出来るなら、すぐさま呼び寄せるべきだ。無駄に死ぬべきではない」
 最初から剣呑だった艦娘の態度が、噛みつかんばかりになる。
「無駄だと?」
 確か摩耶だ。艦娘の名前を思い出せて気分がよく
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