戦慄の魔術
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帝国暦488年4月6日、リップシュタット戦役が勃発の数日後。
宇宙艦隊司令長官ラインハルト元帥の許に、ヤン提督が現れた。
「ローエングラム侯爵、遅くなりました。
私も敵の連合軍を討つ為、微力を尽くします」
「有難い事だが、既に艦隊は動いている。
ハイネセン掌握、組織改革の推進を図る方が得策ではないか?」
「小惑星を刳り抜いた要塞を陥とす為には、陸戦隊員多数の犠牲を覚悟せねばなりますまい。
一滴の血も流さず、難攻不落の要塞を破壊して御覧に入れます」
「イゼルローン要塞を陥とした魔術の種、離反の策は貴族共にも知れ渡っているぞ。
指令室を占拠した勇者達は確か、薔薇の騎士《ローゼン・リッター》と云ったかな?
賊軍の中には装甲擲弾兵総監、石器時代の勇者と揶揄される化け物もいる。
一騎当千の陸戦隊員と雖も、生還は難しいだろう」
「光速推進機関を数億トンの氷塊に取り付け、要塞に衝突させれば済む話です。
一滴の血も流す必要は無いし、陸戦隊員も要りません」
「エル・ファシルの英雄、不敗の魔術師と賞賛された理由が解った気もするな。
卿に任せる、必要な資材は提供しよう」
僕の報告書《レポート》を読んだ直属の上司は、ヤン提督の魔術に感銘を受けたけど。
特許権を侵害せず、ローエングラム侯爵に提出の報告書も部分的に削っている。
奇策の発明者は再び帝国領を訪れた直後、キルヒアイス上級大将の厚意に感謝。
アルテミスの首飾り、12個の要塞を粉砕する為に考案した魔術の準備を帝国の領域で整えた。
バサード・ラム・ジェット・エンジン装着、約10億トンの氷塊が激突する前に避難せよ。
レンテンベルク要塞の総員が事前通告を受け、豪快な発想に肝を潰した事は間違いない。
光速に近い速度と相対性理論に従い、常識外れの重量物を見て籠城を諦めている。
氷の塊は魔術師、疾風ヴォルフ、金銀妖瞳の提督の率いる艦隊に護られ悠然と直進。
巨大な凝結炭酸《ドライアイス》の塊を使い、自由惑星同盟の礎となった故事が再現された。
冷凍の気体は銀河史上空前の巨大な徹甲弾と化し、帝国の要塞を強襲。
石器時代の勇者と揶揄される強者、オフレッサー上級大将も無益な抵抗は諦めている。
艦砲射撃や数千個の爆弾で崩壊する事も無く、蒼氷色《アイス・ブルー》の塊が要塞を直撃。
アルテナ星域会戦の後、フレイヤ星域の戦闘衛星や機雷原の要となる要塞は粉砕された。
白兵戦で幾度も撤退を強いられ、多数の犠牲者を出す凄惨な事態は回避されたんだ。
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