256部分:第十九話 喀血その八
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第十九話 喀血その八
「芸術品もです」
「ああしたものを見ても」
「やはり心が豊かになります」
「美しいものを見れば」
「そうなります」
また言う義正だった。
「ですから。これからもです」
「こうして機会があればですね」
「見ましょう」
義正は笑顔で真理に話した。
「そうしましょう」
「はい。是非」
真理も笑顔で頷きだ。今はその青い海を見ていく。
そうしてからだ。二人で家に帰ったのだった。
家に帰るとだ。すぐにだ。
婆やが二人を迎えに来てだ。心配する顔で話した。
「何もありませんでしたか」
「うん、別にね」
「ありませんでした」
そうだとだ。二人は微笑んで婆やに答えた。
「事故もなかったし」
「ドライブをして海を見てきました」
「そうですか。それは何よりです」
ここまで聞いてだ。婆やは胸を撫で下ろしてだ、
そうしてだ。また二人に話してきた。
「そのことが心配で心配で」
「何もそこまで」
「しなくていいのでは」
「それはわかっていますが」
それでもだとだ。婆やは言うのだ。
「それでもです」
「婆やは心配性に過ぎるよ」
少し苦笑いになってだ。義正はその婆やに答えた。
「僕達ももう子供じゃないから」
「それはそうですが」
「わかっているならそこまで心配しなくても」
「そうですよ、婆や」
真理もだ。彼女は微笑みその顔で婆やに言った。
「私達も子供ではないですから」
「だからですね」
「そこまで心配することはないです」
「そうですか」
「見守ってくれれば」
それでだというのだ。
「それで有り難いです」
「そうなのですか御二人を」
「そうしてくれれば嬉しいです」
「お嬢様がそう仰るのなら」
婆やだ。ここで頷いた。
そうしてだ。二人に対して穏やかな笑顔になって告げた。
「ではこれからは」
「はい、そうして貰えれば」
嬉しいと。真理も返してだった。この場は終わった。
それからだ。二人が屋敷に入るのを見届けてからだ。
婆やは佐藤にだ。こう話したのだった。
「私はどうやら」
「わかっていなかったというのですね」
「はい。お嬢様のことが」
そしてだ。ひいては。
「義正様のことが」
「御二人のことがですね」
「わかっていませんでした」
こうだ。自省と共に言うのだった。
「今そのことがわかりました」
「そうですか。実はです」
「佐藤様もですか」
「はい、私も」
自分もだとだ。彼は少し俯いて話した。
「最近になってです」
「おわかりになられましたか」
「義正様も真理様も」
二人共だ。どうかというと。
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