第三部 古都にけぶる月の姫
魔性の月姫
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の糸が途切れ…かけたところで矢が右腕を打ち抜き、痛みで意識が覚醒する。
痛みで意識が遠のきそうだ。とっくに自分の体は限界を超えてしまっているらしい。もう楽になりたいと、これ以上は耐えられないと訴えてくるのが聞こえる様だ。
でも……
「……まだ、まだ」
ここで倒れるわけにはいかない。
だって、私が此処で倒れたら……輝夜は絶対に、曹操の実験を邪魔しに動くだろう。
私の力不足で、曹操に迷惑をかけるわけにはいかない。そんなことは、したくない。
だから、倒れるわけにはいかない。
今にも崩れ落ちそうになる体を、刀を支えにすることで何とか保つ。
―――でも、ごめん、曹操。もう、戻れそうにはないや
心の中で、小さく詫びる。
「無駄なあがきね」
再度、輝夜の周囲に無数の光の矢が出現する。
それを見ながら、私は静かに目を閉じる。
最後に、あの温かさが、私を包み込んだ気がした。
◆◇◆◇
「……………」
宙に浮いていた輝夜が、ゆらりと地上へと舞い降りる。
先ほど、この地を覆う結界を何かが通り抜けた。おそらくは、援軍に来ると言っていた初代孫悟空と五大龍王の玉龍だろう。
彼らが来たのならばあちらのテロリストたちも思惑をくじかれたことだろう。ならば万事解決というものだ。
派手に吹き飛んだ周囲の風景を無感動に眺め、扇で口元を隠して一点を見据える。
その中心には、ぐったりと倒れた四織の姿があった。意識はもうないのだろう、それでも刀をがっちりと握っている。
ピクリとも動かないその姿を中心に広がるクレーター。それを見ればどれだけ過剰な威力だったかを推し量るのは容易だろう。
だが……この少女はまだ「生きている」。微かではあるが、呼吸はまだ絶えていない。
それがおかしい。なぜ生きている?
明らかに過剰なほどの威力と数で撃ち放ったはずだ。防ぐ手段などなかった。それは撃った本人である輝夜が断言できる。
「……やはり、『あれ』ね。何と忌々しい…」
輝夜の眉間に青筋が立つ。あの刹那、確かに輝夜は見た
広がった漆黒のオーラが、四織を打ち抜かんとした矢「だけ」を飲み込み、そのまま消えたことを。
あれは危険だ。あれは世界そのものへの呪い。もっとも原初にして凶悪な、世界全てを否定する呪い。
そんな力をテロリストに預けるわけにはいかない。否、誰にも使わせるわけにはいかない。
輝夜の頭上に浮かんだ魔力の矢が、ぴたりと四織の心臓を狙う。その刹那。
「……あら?」
魔力の矢が、瞬時に向きを変え上空へと射出される。飛んできた聖なる波動と衝突し、爆発を起こして対消滅する。
一体誰が、と目を向けかけたところで、殺気を感じる。
見れば、四織の傍に一人の男が立っている。片方の目が潰れ、血を流している。四織
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