第三部 古都にけぶる月の姫
魔性の月姫
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るほど。忌々しい、世界そのものに対する呪い。確かにそれなら、私の魔力ですら呪い殺すことが可能でしょうね」
ピクリとも動かない刀身に絡み付く風。そこに魔力を感じる。
だが…その魔力は、悪魔が使う物とは何かが違う。はっきりとは言えないが、そう感じた。
その魔力が輝夜の周囲に渦を巻くように満ちている…否、輝夜そのものが魔力の衣をまとっているようにすら見える。
「……その、魔力…」
「あら?これが見えるのね。流石は私の子孫、と言ったところかしら」
妖艶に笑った輝夜の周囲で、粒子状になったそれがキラキラと輝き、揺らめく。
今まで見たどんなものよりも異質で、しかし妖しいほどの魅力を放つそれを輝夜は、束ねて結晶と成す。
「月の力。月という星からの光より生まれし、妖の力。常夜に降り注ぐその力を、知覚し操れるのは私と、その血を受けた者のみ」
……気が付けば分かる。同質の魔力が大気のそこらじゅうに満ちていることが。それがいきなり変容し、魔法と同じ効果を発揮することが。
つまりこれは。悪魔の魔力と同じように、術式という過程を経ずに現実を歪める在り方。
だというのに。彼女は挙動も、仕草すらも使わずに、それをやってのける。
小さな仕草から次の行動を予測する私とは、めっぽう相性が悪い。
「当然でしょう?私は“月の落とし子”の最高傑作。宙に存在する魔性の象徴にして、その集合体。私にとって魔法を操ることは、それこそ息をするのと同義」
粒子がばらまかれ、爆風となって私の視界を阻む。
私の立つ地面すら爆破され、投げ出された私の体に、圧縮された空気の塊が目の前で弾ける。
「くっ!」
咄嗟に刃を振るってそれを弾く。やはり魔力を帯びたモノである以上、打ち消すことは可能だが…全てを消すことはできず、体に傷が増えていく。
じわじわと嬲られ、追い詰められていく感覚…分かっている、彼女にとっては完全にこれは「遊び」または「処刑」なのだ。
私程度を殺すのに本気になる必要などないほどの、圧倒的実力差。
「ああああっ!!」
左足が魔力の矢で撃ち抜かれた。神経に直接灼熱の棒を突っ込まれたような痛みが弾ける。
天を見上げれば、宙に浮いた輝夜の周囲に何千と展開された魔力の矢。次の瞬間には倍の数に、さらに倍に際限なく増えていく。
それが一斉に輝き、綺羅星のように落ちてくる。ちまちまと狙って落とすのではなく、この周辺一帯を更地にしてしまうような絨毯爆撃。
刀を振るって切り抜けても焼け石に水。無数の綺羅星の一つを刻んだところで、残りに撃たれるのが道理だ。
背中、腕、足、頭。ギリギリで避けてはいるもののあちこちに紅が散華する。
「まだあがくの?もういい加減、楽になればいいのに」
身体から力が抜ける。意識
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