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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第九話 深淵と対峙する時
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って歩き出す。
加賀共に部屋へ向かう途中、凰香は意識を集中し自身に宿る魂を介して防空棲姫に話しかけた。

「(防空姉、今大丈夫?)」
『ええ、先ほど食べ終わったばかりよ。この方法で話しかけてくるなんて、何かあったの?』
「(ちょっと面倒ごとに巻き込まれて、今加賀と一緒に部屋に戻ってる途中)」
『なるほどね。なら私は幽体化しておくわ。三人にも伝えておくから』

そう言って防空棲姫の声が聞こえなくなる。凰香は意識を集中させることをやめると、前を歩く加賀に視線を向けた。
加賀は凰香と他の艦娘が会わないように心がけてくれているのか、人通りの少ない道を選んで歩いている。そして時折振り返っては凰香がついてきているのを確認していた。
凰香は加賀が振り返ってきたタイミングで聞いた。

「加賀さん、少し聞きたいことがあるのですが」
「何かしら?」
「『前任者』は一体どういう人間だったんですか?」
「それは……」

凰香がそう聞いた途端加賀が表情を曇らせて言い淀む。しかし凰香には加賀のその反応だけで十分だった。
しかしどうしてもわからないことがある。
それは『食事』の件だ。
食事の件は前任者が言い始めたことである。なら前任者が消えた今、それを止めても問題は一切ない。
しかし艦娘達は未だにそれを続けている。表情を見ても満足しているようには見えないし、納得しているようにも見えない。

(……『誰か』がまだそれを強制してる?)

確証はないが、それ以外の理由が見つからない以上それが一番可能性が高い。
凰香は確証を得るために加賀に聞いた。

「加賀さん、前任者がいなくなったのになぜ状況は変わーーーー」
「提督、こっちよ」

凰香の言葉を加賀が無理矢理遮り、建物の中へ入っていってしまう。歩行スピードも明らかに速くなっており、凰香が小走りでないとついていけないほどである。
しばらく凰香が小走りでついていっていると、加賀が凰香達の部屋の前で立ち止まった。

「着いたわ」

加賀がそう言ってくる。その表情は『これ以上は聞くな』と言いたげな、悲痛な表情であった。
しかし、加賀の表情を見た凰香は確信を得た。

(……なるほど、『身内の誰か』が強制しているということね)

加賀の身内の誰か、つまりこの鎮守府に所属する艦娘達の誰かがこの状況を維持しているということになる。榛名と夕立はここから脱走し轟沈したことになっているため、この状況を維持することは不可能だ。
しかしこの鎮守府に所属する艦娘達は数が多いため、凰香はまだ全員把握しきれていないどころか、見かけたか艦娘すらいない。

(見つけ出すとなったらかなりめんどくさいわ
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