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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第九話 深淵と対峙する時
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対にさせない!!曙ちゃんや初霜ちゃん、他の子には絶対に手を出させないんだから!!」

潮は凰香の言葉に耳を貸そうともせずに喚き散らす。完全に頭に血が上っているので、冷静な判断ができないのだろう。
軍学校にもこのような人物が多くいたので、このような場合は何を言っても無駄だということを凰香は理解している。

(ここに時雨がいなくてよかった)

潮の怒鳴り声を聞きながら凰香はそう思う。
時雨は凰香のことに関すると非常に攻撃的になる。前の曙の件は完全に凰香達の方に非があったために何もしようとしなかったが、今回は凰香は潮や初霜になにもしていない。
もし時雨がここにいたら潮に対して手を出さずに容赦無く徹底的に潰しにかかるだろう。
それを置いておいても時間的にもそろそろ駆逐艦の艦娘達の就寝時間なので、他の艦娘達の迷惑になる。 怒鳴り声で眠ることができなくて明日の出撃遠征や演習に支障が出るのは凰香としても避けたいところ。
そして何よりも、凰香自身がこの状況をいい加減鬱陶しく感じていた。
凰香はこの状況を抜けるために潮に言った。

「潮さん、一旦落ち着いてください」
「ここにきて罪を認めるのね!!やっぱり初霜ちゃんを無理矢理従わせていたじゃない!!」

凰香がそう言った瞬間、潮がそう返してくる。
凰香はただ『落ち着け』と言っただけなのに、潮はあろうことか凰香が『罪を認めた』と思い込んでしまっているようだ。ここまできたら最早思い込みなどではなくトラウマレベルである。

(何をどうしたらここまでくるのかしら?)

凰香が若干苛立ちを覚えながらそう思っていると、潮がさらに喚き散らす。

「最っ底よ!!あんたなんかこんごーーーー」
「何を騒いでいるの?」

突然背後から別の女性の声が聞こえてくる。それにいち早く反応した潮が凰香の背後に目を向け、先ほどとは打って変わってパアッと顔を綻ばせた。
凰香が背後を向くと、そこには白い道着に青いミニスカートのような袴の茶髪のサイドテールの女性が立っていた。

「『加賀』さん!!」

潮がそう言って凰香の横を走り抜け、加賀に勢いよく抱きつく。潮に抱きつかれた加賀は潮を優しく抱きとめ、落ち着かせるように頭を優しく撫で始める。
すると潮が加賀に言った。

「加賀さん!!またケダモノが本性を現しました!!早くここから追い出しましょう!!」
「潮ちゃん、わかっているから少し落ち着きなさい。他の子達が起きちゃうわよ?」

加賀が潮と同じ目線に合わせ、優しく語りかける。それを聞いた潮がようやく周囲の状況に気がつきおとなしくなる。
それを見た加賀が一瞬だけ凰香に視線を向けてから潮に優しく語りかけた。


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