暁 〜小説投稿サイト〜
霊群の杜
産土神
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昏い地下のロビーで、俺はゆっくりと紫煙をくゆらせていた。チャコールのハンチングを目深に被り、バーカウンターにもたれる『彼女』に、ちらりと目をやる。
「ボスはまだ出てこないのかい」
「ふふ、忙しいのよ…あのひと」
そう呟いてマルガリータを転がしながら微笑む。相変わらず、いい女だ。
「知ったような口を利くのね、オイロケ」
バーカウンターの差し向かいから、少しきつめの声が飛ぶ。イエネコがオイロケに突っかかっている。猫のような瞳を精一杯開いての威嚇だ。ふふ、どれだけボスを独り占めしたいんだか。
「ははは…おいおい、イエネコだからってキャットファイトはいただけないぜ」
いつの間にか俺の傍らに立っていたゴリマッチョが、茶化すように笑う。…仕方のない奴だ。
「あ、あの…皆さん、喧嘩は、あの…」
俺の可愛いスイートハートがおずおずと声を出す。俺はその頭を抱き寄せて、再び紫煙を吐いた。少しけむそうにするが、俺が灰皿に煙草を潰し入れると、そっと額をあずけてきた。…最高の、いい女だ。
「ふぅん…お似合いじゃないお二人さん!」
「おにいちゃんは、あたしとけっこんするんです!!」
ジェイケイがやっかみの混じった声で俺達をからかいにきた。ロリは…相変わらず俺のことが大好きだ。ふっ…罪な男よ俺も。スイートハートは泣きそうになって俺を見上げる。眼鏡越しの大きな瞳が最高に、そそる。
「ははは!まあまあ可愛いお二人さん。…ボスが来るまで俺とポーカーでもやらないか?」
「相変わらずね、タラシ。お金賭けないならいいよ」
「ふふ、カワイ子ちゃんからお金なんてとらないよ!」
タラシも相変わらずの女好きだ。
「ねえ結貴くん。また面白い動画を見つけたんだよ」
いつの間に俺の背後に現れた変態センセイが、またグロい動画を見せに来る。
「よせ。お前のオススメ動画は酒を不味くする」
「へへ、ちがいねぇな。そのスマホを引っ込めな、変態センセイ」
「ひどいよ」



「何をぼさっとくつろいでいる。仕事だ」



バーのドアベルが、カラン…と澄んだ音をたててボスの来訪を告げた。
黒い羽織をはためかせ、ボスは涼しい顔で俺達を見渡す。

「オイロケ、タラシ、根暗メガネ、調査は大体済んだのだろうな」
「オッケーよ!」「うんばっちり!」「はい…なんとか」
「ではお前らの出番だ、鎌鼬、ジェイケイ、ゴリマッチョ、ロリ、イエネコ!」
「おう」「オッケー」「まかせろ」「はーい!」「かしこまりました」
「あれー、ぼくは?」
「変態センセイは事務所待機」
「ひどいよ」
「さあ、出動だ。玉群青年探偵団!!」



「ネーミング酷ぇな!!」



叫びながら飛び起きた。
まず周囲を見渡す。正方形の石壁に囲まれた、いつもの奉の部屋だ。俺は炬燵の中で寝
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