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霊群の杜
産土神
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が?」
「いや。…もっと厄介なのに、目をつけられたかもしれない」
他の連中も、同じような夢を見ていたとしたらもう、確実だねぇ…そう呟き、奉はまた俯いた。眼鏡の奥の表情が見えない。
「厄介?殺される以上に厄介な奴がいるのか?」
「俺が殺されることは大した問題じゃないんだよ」
「まぁ…そうだが」
『奉』は玉群の血族の体を借りて何度も蘇る。大した問題じゃないというか、殺しても無駄という奴だ。
「どうもね、ここいらの『産土神』に目をつけられたっぽいんだよねぇ…」
そう前置きして、奉は奇妙な話を始めた。


産土神とは、日本中あらゆる土地におわす『土地の守り神』の事を云う。それはその土地に育まれる全てを守り、育て、栄えさせる役割があり、土地を始め万物を生み出す神と云われる。
1000年以上前に、この地に流れ着いた『奉』は、いずれこの地を立ち去る事を前提に、仮に玉群に居を構える『客人神』と見做されている。産土神という概念があるのならもう少し縄張り意識などもありそうなものなのだが、こういう住み分けが『八百万の神』の国を成立させているのだろう。

「なるほど、そういうノラ神格みたいな扱い…と。もうそれ妖怪とか云わね?」
「誰が妖怪か失敬な。…だがこのふわっふわな立ち位置のお陰で、俺は余計な仕事を担わずに平和にやってきたんだが」

奉がごく限られた数人を集めて自分の『組織』を作りたい、と密かに願ったこと自体が、『産土神』への転身を願ったと見做されたらしい。随分と無理矢理な話だとは思うが、それが何を意味するかというと…。

「俺が願ったメンバーがそっくりそのまま、本来の産土神の保護から外れた、ということになるねぇ」
「―――はぁ!?」
ふっ…と目の前が暗くなった。
百日参りや七五三、初詣などで散々息災を願ってお参りしてきた近所の神社が、俺達を保護してくれなくなり、代わりに…
「この怠け者が、俺達の産土神に!?」
「失敬な。誰が怠け者だ」
「だって1000年以上も住み着いてんのに客人名乗ってんのは余計な仕事押し付けられたくないからだろ!?」
「さて、本来の産土神から外されたことにより」
俺の言葉には答えず、奉は話を続けた。

俺達は奉の保護下に入ると共に、産土神から見放された。更に悪いことには、日本の神は八百万などと云われて一見懐が深いように見えるが、それは先ほど述べたように『客人神』『半妖怪』等の住み分けをしているだけで、実は酷く縄張り意識が強いのだという。今まで土地の神が奉に寛容だったのは、奉が客人だったからなのだ。

「俺の担当する地は恐らく、玉群の敷地を含めたこの一帯だけ。とはいえ、玉群はこの地を取り返しのつかない方法で『汚辱』しているから、元々土地の神には見放されてんだよねぇ。俺が産土神にされたのも『丁度いい
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