産土神
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きり、奴の奇行はスルーして他の連中とアドベンチャーコースだか水上コースだか、難易度の高いコースに挑んだのでよく覚えていなかったのだが。
「まさか、買っちゃう程好きだったとは…」
「いや、あの時トランポリンから離れなかったのは、本読んでいると体育教師にうるさいこと云われるから跳ねながら過去に読んだ本の内容を思い出していただけなんだがねぇ…トランポリン、何も考えないでも勝手に跳ねるからねぇ」
「じゃあなんで買うんだよ。要らないだろこれ」
―――幼児を一人、軽々持ち上げられるだけの体力が必要になったのでねぇ。
そう呟いて奉は、唇を噛みしめた。
「お前……」
俺もそれ以上の言葉を継げなかった。こいつ…小梅に『飛行機』をしてやれないことで鴫崎に後れをとっている事を、そこまで…今まで俺が何を云っても自分から運動しようとはしなかったお前が。トランポリンとはいえ自分から運動を。
「……ちょっと、キモいな」
「やかましいよ」
「……トランポリンでは腕力はつかないがな…まぁ、何もしないよりはましだが」
やおら奉が見取り図にダンベルらしきものを書き込み始めた。
「えー…ダンベル続かねぇよ絶対。かなり能動的な運動だよダンベルは。しかもトランポリンの横にダンベルって大事故の予感しかしねぇよ」
「うるさいねぇ」
そう云いつつも奉は、隣のダンベルを消しゴムで消して、鉄棒のようなものを書き入れた。
「なにこれ、懸垂でもやるのか。2回も出来ないのに?」
「知らんのか。ぶら下がり健康器だ」
「お前…これはやめておけ。それ俺の爺さんの部屋で『ハンガーを掛ける何か』みたいなポジションになってるやつだぞ」
「…ブルワーカーにしておくか」
「前言撤回だ。ぶら下がり健康器にしておけ。ハンガー掛けられるだけマシだ。あれ無駄にデカいし意外と固いし、他に使い道ないんだぞ」
「まじか。『まっ たく カンタンだ!』というのはガセなのか…よく知ってるねぇ、あんな古の器具」
「爺さんの押入れを無駄に圧迫しているよ。そして誰も使わねぇよ」
「お前の爺さんも大概だねぇ…親父さんは割としっかり者なのに」
「爺さんがああいう人だからじゃねぇの。というか…お前って前世、昭和の終わりくらいまで生きてた?」
「わざわざ探して買うのも億劫だねぇ…結貴が持ってんなら貰っておこう」
俺の質問には答えず、奉は俺ん家のブルワーカーを勝手に間取り図に書き込み始めた。
「俺のじゃない、爺さんのだ!爺さんまだ生きてんだからな!?」
「あぁ?あの爺さんが出奔して何年かねぇ?もう失踪宣告でも出して相続しちまえよ、ブルワーカーを」
「あんなもの手に入れるために爺さんを亡き者扱いするのか?厭だよ何となく。微塵も欲しくねぇよ」
「奉様、お客様がいらしています」
俺達
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