暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
「わたしは……わたしのことが知りたいです」
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足げな吐息を漏らしつつも、黒髪の少女はリズへと首をかしげていれば。止める間もなく得意げな表情のリズから、仮想世界だからといって何やら適当な言葉が少女に放たれて。

「なるほど。いいことを聞きました」

 ――少女は相変わらず無表情ではあったものの、その時だけはどこか瞳が輝いていたような、そんな気がした。


「ごちそうさまでした」

「あんたに連れてきて貰ったこの鉱石なら、さっきの食べ放題なんかじゃすぐにお釣りがくるわよ」

 そうして何か分かったら連絡をくれと、ユイを連れてくるアスナとはまだ会いたくないアルゴとは、フレンド登録をして浮遊城にて別れると。もはや最初からパーティーメンバーだったかのように馴染んだ少女を連れて、アスナとの待ち合わせ場所であるリズベット武具店――イグドラシル・シティへと戻ってきていた。

「アスナ!」

「リズー! 久しぶりー!」

 転移門から歩いてすぐ、商人系プレイヤーが登竜門としてたむろする商店街。その一角にあるリズベット武具店前には、二人の少女が立っていて。その少女が親友とその娘だと分かるやいなや、リズは走り出して親友とハイタッチを交わしていく。ふと、生還者学校も夏休みでリズは新しい店で忙しいと、そういえば会うのは久々だと思いながら、ショウキもアスナとユイに手を振って。

「こんなんでも武器の修理ぐらいは出来るんだから、たまには顔を出してくれればいいのに」

「えーと……リズとショウキくんが二人きりなところ、邪魔しちゃダメかなって。みんな」

「そっ……そんなの気にしないでいいから! ええ!」

「あー……ユイ」

「はい、ショウキさん……その子ですか?」

 珍しくアスナにからかわれている側に立たされているリズはどうしようもなく、ショウキは多少なりとも赤面しながらこちらに飛んできたユイに問いかければ。アスナから大体のことは聞いているらしいユイは、ショウキの背後にいる黒髪の少女を見ると、妖精ではなく本来の子供のアバターへと姿を変える。

「……その、いいのか?」

「……あまり褒められたことではないと思いますが、わたしと同じNPCが困っているんですから、助けるのは当然ですから!」

「……あなたは?」

「わたしはユイって言います。よろしくお願いしますね!」

 一介のプレイヤーごときが、ユイがいるとはいえNPCのデータなど覗き見ていいのか――と問いかけたショウキに、ユイは一瞬だけ困ったような表情を見せたものの、すぐに朗らかとそう返答する。同程度の身長の相手に始めて会ったのか、それともNPCどうしで何か感じるものがあったのか、少女が珍しく自発的に首をかしげた。

「すいません。ちょっと、失礼しますね」

「はい」

「……ユイ、どう?」
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