「わたしは……わたしのことが知りたいです」
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Cの情報を検索できる権限を持った娘なんて、知り合いにいたりしないカ?」
「あー……なるほどね」
随分と具体的なアルゴの提案に、ショウキもリズも揃って同じ人物を思い浮かべた。わざわざ娘、などと指定するくらいならば、当の娘――ユイのことは、アルゴも把握していることなのだろう。ただし内部データの盗み読みなどあの夫妻がやっているわけはなく、しっかりと言い聞かされた娘もやることはないために、NPCの少女は何者なのか調べてほしい――という説得が多少なりとも面倒くさそうで。
「その交換条件は?」
「新しく始めた鍛冶屋、経営に困ってるんだロ? それでも質は確かだし、オレっちが情報ついでに撒いておくヨ」
「……不安定ね」
「そっちへの条件も相当に不安定だナ」
そうしてユイに自ら禁じていることをして貰うほどの利益がある交換条件かを確認すれば、《鼠》のアルゴとして売る情報に、リズベット武具店の宣伝も入れてくれるという不安定なもので。ただし不安定などと言ってしまえば、そもそもショウキたちが少女の情報を探れるか、探れたとしてもそれがアルゴの得になるか、アルゴの申し出からして不安定なものだ。
「……いいんじゃない、不安定などうし」
「にひひ。どっちが得するかもわからない、ゆるーい業務提携ってワケだナ」
「……ちょっと待て」
「なん――」
「……けぷ」
不安定だからこそ、業務提携などと堅苦しい言葉に反して、緩い繋がりでもって協力できると。鼠と店主はそんなことを考えたのか、肉が焼けるプレートを挟んで悪どい笑顔で握手が交わされた。その握手をショウキが止め、いいところを邪魔されたアルゴが不審げな表情を隠さずにいると――そんな悪どい商売人たちの渦中にいるとは、夢にも思っていないであろう少女の満足げな音が響いて。
「……そもそも、こいつに聞いてからの話だろ」
「……そうだナ。その子の意思を聞くの忘れてたヨ」
あの《鼠》にリズベット武具店を宣伝してもらえると聞いて、こちらもどうやら舞い上がっていたらしい。まずは話の渦中にいるNPCの少女の意思を聞くべきだとショウキが語れば、アルゴはしばし言葉を失ったように沈黙した後、ニヤリと笑って肯定する。とはいえその笑顔は、まるで親が子供に向けるもののようで、流石にこちらの眉間にシワがよれば、反比例してアルゴの口角が上がっていて。
「失礼しました」
「あー……いいのよ。ごめんね、変な話してて。それと……」
「……なんだよ」
「いーや? そんなこと聞いたのはキー坊ぶりだったから、ちょっと懐かしかっただけダ。ほら、オネーサンが育てた肉やるヨ」
「……どうも」
そして少女の相手はリズに任せてアルゴに問い詰めれば、思ってもみなかっ
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