「わたしは……わたしのことが知りたいです」
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まだ自己紹介していないにもかかわらず、ショウキたちのことは承知らしい。そこは何も知らずに話しかけては来るまいと分かっていたため、特に驚きはないものの、今度はリズが苦笑する手番であると同時に、ショウキは少女のために専用のタレを小皿に垂らしていた。
「……なんか気持ち悪いわね。一方的に知られてるって」
「オイオイ、リズベット武具店っていえば情報屋じゃなくても知ってるくらいには、ソコソコ有名な店なのにナ……昔も今も」
「よし……焼けたぞ。ほら」
「ありがとうございます。いただきます」
「その今のも昔のも、リズベット武具店はもうないわけだけど。……やっぱり焼けるの速いわねぇ、もうちょっと情緒ってもんがないのかしら」
食べ放題の肉など元からすぐ焼けるようになっているというのに、過剰かつ簡潔を心がけたこのVR世界ともなれば、すぐにでも焼けるのはホットドッグ作りで経験済みだ。プレートに焼けていく肉をそれぞれ好きなものを取っていき、ショウキはさらに追加の生肉をプレートへ投入していく。
「うーん、やっぱりご飯が欲しくなるわね」
「特別にロハでいい情報だけどナ、絶対に太るゾ」
「はふはふ……太る?」
「あんたは気にしなくて大丈夫よ、羨ましいわねー。ほら、ショウキも肉焼く係になってないで」
「いいや俺は焼く」
「……皿には乗せとくわよ」
すぐさま焼けてしまう肉をいい感じのタイミングを見極めることと、面白いように食べてくれる隣の太るという概念が分からないらしいNPCの少女から、食べるより焼くのが面白くなってきてしまったショウキに。少しばかり呆れたような表情を見せながらも、小皿に焼けた肉を乗せてくれるリズへ感謝しながら、アルゴとの会話が続いていく。
「ま、オレっちもこの世界に来てた訳だが、情報屋なんて職業はあの頃より厳しくてナー」
「……まあ、そうだろうな」
「このお肉は食べても大丈夫ですか?」
「あら、食べ頃が分かってきたわね?」
せっかくリズが入れてくれた肉が冷めては申し訳ないと、ショウキは生肉とトングを机に置きながら。ウーロン茶を口に運びながら苦笑するアルゴの発言に、納得するかのように頷きながら、特製タレのついた焼肉を咀嚼する。確かに閉鎖空間だった昔の浮遊城だったならばともかく、今や攻略情報など片手間で検索すれば手に入るもので。カーディナル・システムによって管理と更新が常にされているため、片手間に調べることに限界があるのは確かだが、だからと言って情報屋にわざわざ頼もうとは思うまい。
「それでも昔とった杵柄ってヤツで、浮遊城を専門に細々とやってたが、最近になって浮遊城各地にも新ダンジョンや新クエストが倍増した……この村の《竜人の洞穴》みたいにナ」
「やっぱ
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