巻ノ百二十二 集まる豪傑達その十二
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「それでもじゃな」
「それがしが武士ですから」
「だからか」
「はい、戦になれば」
「華としてか」
「散るつもりです」
「この戦敗れればか」
「それは兵法の常ですな」
敗れることがあるのもというのだ。
「左様ですな」
「うむ、わしは戦に出たことは少ないが」
それでもとだ、大野はその木村に答えた。
「しかしな」
「その通りですな」
「そうじゃ、片方が勝てばな」
「片方は負ける」
「やはり戦の常じゃ」
勝敗、それはというのだ。
「貴殿の言われる通りじゃ」
「だからです」
「敗れてもか」
「幕府に華を見せてやります」
大野に笑みさえ浮かべて答えた。
「そうしてやります」
「武具の手入れをしてか」
「香も焚く用意をしております」
その武具、ここでは具足にだ。
「それも」
「そして華々しく戦いか」
「卑怯未練なぞ見せず」
「大坂、豊臣に戦を見せるつもりか」
「左様です」
こう大野に言うのだった。
「それがしは」
「そうか、わかった」
「それでよいですか」
「うむ、ならば武士の戦の仕方をな」
それをというのだ。
「後藤殿に聞くのじゃ」
「あの御仁に」
「そうせよ」
「あの方が優れた武士だからですな」
「まさにな、だからな」
「あの方の傍にいて教えを授かり」
「後藤殿は吝嗇な方ではない」
後藤についてこうも言った。
「貴殿が頼めば何でも何度でもな」
「教えて下さいますな」
「そうした方よ、だからな」
「あの方の傍にいて」
「教わるのじゃ」
武士としての在り方、そして戦い方をというのだ。
「そのうえでな」
「華々しく卑怯未練なぞなく」
「戦われよ」
「わかり申した}
「してわしはじゃ」
「豊臣家の執権として」
「己の務めを果たす」
「わかり申した、では互いに」
「十二分に戦おうぞ」
「豊臣家の為に」
大野はこう言ってだ、木村と誓い合った。豊臣家の若武者はその目を燃え上がらせて武士として戦うことを誓っていた。
しかしその彼を見送ってからだ、大野は側近達にこんなことを言った。
「あれだけの者、何とかな」
「散らせたくはない」
「そう言われますか」
「この戦は負ける、だからこそな」
そう確信しているからだというのだ。
「是非な」
「生き延びてもらい」
「そうしてですか」
「天寿を全うして欲しいと」
「どうしてもという時はわしが腹を切ってじゃ」
そうしてというのだ。
「首を幕府に差し出してな」
「豊臣家を助けてもらい」
「そうしてですか」
「木村殿についても」
「助かって頂きたいですか」
「そう思っておる、後藤殿にこのことも話しておくか」
こう言って彼は後藤に実際に話した、そして彼が頷くのに
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