巻ノ百二十二 集まる豪傑達その八
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「それならです」
「そうです、我等は殿と最後までいます」
「火の中水の中です」
「何処までついていきまする」
「ですからその様な水臭いことを言われないで下さい」
「そうされて下さい」
「そう言ってくれるか」
後藤は家臣達、誰一人として自分の前から去ろうとしない彼等に対して瞑目しそのうえで言ったのだった。
「わしはいい家臣達を持った」
「そう言って頂き何よりです」
「それではです」
「我等このまま最後までです」
「殿と一緒におります」
「あの世でも何処でも」
こう応えてだった、彼等は一人も後藤の前を去らなかった。そしてだった。
大坂にまた一人来た、今度の者は。
「岩見重太郎殿か」
「あの化け猿を倒した」
「あの方も来られるとはな」
「また凄い方が来られやな」
「全くじゃ」
こう口々に言う、そしてだった。
岩見はその逞しい顔で笑ってだ、周りに言った。
「ここなら何の不足もない」
「不足もないとは」
「それはどういう意味でござろう」
「一体」
「死ぬ場所としてじゃ」
それにというのだ。
「何の不足もないわ」
「戦いそしてですか」
「そうしてですか」
「ここで死なれる」
「そうお考えですか」
「そうじゃ、華々しく戦いな」
そしてというのだ。
「最後の最後にじゃ」
「散る」
「武士らしくですか」
「そう言われますか」
「それで来た」
また言ったのだった。
「ここにな」
「左様ですか」
「散られる為に」
「武士の最後の一花を咲かせる為に」
「その為に」
「左様、思う存分働き暴れ」
岩見は笑って周りの者達に話した。
「そうしてな」
「その名を残されますか」
「散られて」
「そうする」
「それも武士じゃな」
岩見のその言葉を聞いて言ってきた者がいた、それは宮本武蔵だった。宮本は岩見のところに来て言った。
「散るのも」
「貴殿は確か宮本武蔵殿」
「わしの名を知っておるか」
「天下無双の剣豪と聞いておる」
岩見もまた笑って宮本に応えた。
「二刀流とな」
「左様、そしてな」
「この大坂で戦ってか」
「功を挙げてな」
そうしてというのだ。
「そうしてじゃ」
「一角の者になるか」
「そのつもりじゃ」
「そうか、しかしな」
岩見は宮本と話をしてだ、真顔になりこう返した。
「お主もわかろう」
「この戦で勝つのはじゃな」
「そうじゃ、わかっておろう」
「そうじゃが幕府にも諸藩にもな」
「仕官出来なかったか」
「ははは、巡り合わせが悪かった様じゃ」
宮本はその豪快な顔で明るく笑って岩見に話した。
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