第三章 敦子、目覚める
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ベッドの上で、ゆーっくりと、目を開いた。
こしこしと、寝ぼけまなこをこする。
んー。
なんか、納得いかない。
低血圧お嬢様キャラのように、とろーんとした感じに起きようと思ったのに。
なかなか難しいもんだな。
傍から自分を見ているわけではないので、もしかしたらちゃんとやれているのかも知れない。
でも感覚的に、どうにも納得出来なかった。
やり直そ。
と、沢花敦子は、そっと目を閉じ、そして、ゆっくりと開いた。
焦点の合わない目で、ぼんやり天井を見上げた。
ゆっくりと、こしこし軽くまぶたをこすった。
手のひらで、目を隠したままの敦子。
その口元に、じんわりと笑みが浮かんでいた。
「うん、今度はいい感じに起きることが出来たあ」
満足げな表情で上体を起こした彼女は、今度は両腕を上げて大きな伸びをした。
「あ、あ、いまのもやり直しっ」
ばったり倒れると、ゆーっくりと上体を起こして、
う、うーん、と、ちょっと気だるそうに、ちょっとだけ色気を出して、伸びをした。
にんまり会心の笑みを浮かべると、
「よおし、完璧っ。合格だあーい」
大声をあげ、ようやくベッドから降りた。
スリッパを履いて床に立つと、学習机の上に置かれた黒縁眼鏡を手に取り、掛ける。
くるりと身体を回転させ、日々見慣れた部屋を見回した。
出窓の、薄桃色のカーテンの隙間からは、朝日が差し込んで、部屋の中を淡く照らしている。
そのカーテンの下には、たくさんのかわいらしいぬいぐるみが置かれている。
くま、うさぎ、ロボット、兵隊さん、餓○伝説2のクラ○ザー、等など。
「おはよっ、ラビくん。青い空に、ぽっかり綿菓子の雲。今日もとってもいい天気だね。彼女とは、仲直り出来たのかな。……ええっ、そうなんだあ。それは困ったね。そうだ、手紙でも書いたら? うまくいくといいね」ちょっと視線をずらして、「ルーセルくん、お勤めご苦労様です。ルーセルくんが守衛をやっているから、町のみんなが安心して暮らせているよ。立ちっ放しは大変だけど、健康に気をつけて頑張ってね。でも、たまにはお休みもらって、田舎に帰ってお母さんに顔を見せてあげたらいいんじゃないかな」さらに視線を動かして、「ロボくん、ご機嫌いかがですか? わたしね、今日はね、とってもいいことがあったんだよ。ロボくんに聞いてもらいたいな。あのね……」
ぬいぐるみの一体一体に、丁寧に、やわらかい微笑みと、言葉を投げ掛けていく。
先ほどまで寝ていた木目を生かしたお洒落なベッドに、ふわっふわのカーペットに、天井からぶら下がるキラキラ装飾のシャンデリア、フリルふりふり薄桃色のカ
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