第三章 敦子、目覚める
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っ低でも一時間待ちは覚悟した方がいいよ、君い」
「うええ。なんだよお、留美もそんとき誘ってくれてればよかったのにいい」
「んなこといわれても。なんにも知らなくて、たまたまだったんだもん。やっぱ日頃の行いかにゃあ」
「にゃあじゃないよ。だいたい日頃の行いで運不運か決まるんなら、あんたとっくに車にひかれて死んでるでしょ! まあハナキヤは高いから、どのみちバイト代が入るまでは無理だけどさ。だから今日はあ、どうしようかなあ。敦子はさ、なんかリクエストある? 敦子っ」
橋本香奈は、敦子の脇腹を肘で軽くつついた。
「どこでもいいよ、あたしは」
敦子は、特に考えることなく即答した。
「主張しないんだからなあ」
「だって、そういうとこってよく知らないし」
世間全般お店全般、どこが美味しいとか、どこの服がおしゃれとか。
素っ気ないのは、それだけが原因ではない。そもそも、ごくごく普通の女子の会話自体が苦手なのである。
じゃあどんな会話ならば得意なんだ、といわれると頭をかいてごまかすしかないのだが。
好きなのはアニメや漫画だが、会話するには当然のこと相手が必要なわけであり、敦子は一度も熱く語ったことがない。
アニメ好きであることを隠してはいないものの、話題が合う友達がいないためだ。
ごくごくたまに話題を振られて答えることがある、とまあそんな程度だ。
「イシューズだ!」
橋本香奈が、突然びくり肩を震わせたかと思うと、小さな声でこそっと叫んだ。
「うわ、ほんとだ」
大島栄子の顔が、楽しい会話による笑顔から急転直下、不快指数百へ。
え、なに、イシューズって?
と、敦子がきょとんきょろきょろしていると、前方から、三人の男子生徒が肩を並べて近寄ってきた。
あれだろうか、ひょっとして。
三人のうち、二人はオカッパ頭で、黒縁眼鏡で、大きく仕立てた制服がそれでもはち切れてブチブチとボタンが飛びそうなくらいぶくぶく太っている。
残る一人は反対に、二人にすべて吸い取られているのではというくらいガリガリだ。
彼らが近づいてくるにつれて、話し声がはっきりと聞こえてきた。
「…確かに、レンドル殿の意見、いいえて妙ではあるが、しかしあそこはメニーロウを助けずに、むしろ売り飛ばすくらいのキャラ立てを発揮して欲しかったのでござるよ、拙者は」
肥満オカッパ黒縁眼鏡の一人が、ネチョネチョ甲高い声を張り上げた。
「いやいや、世の中の暖かさに段々と変わってきたってだけだろう。種族にかかったキュルキュレムの呪いなんて嘘だって、段々と気付いてきた、ってことなんだよ」
肥満オカッパ黒縁眼鏡のもう一人。
「いや、であればこそ、まずはそんな己への葛藤というか
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