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とある3年4組の卑怯者
99 疎開(くもがくれ)
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ゾあがってください!!」
 メアリーは花輪の急な注文に驚いたが、兎に角受け入れる事にした。永沢の両親は外人のお手伝いさんという事で驚きもあったが、メアリーに泣きながら礼をした。メアリーはこれまでにも花輪が夏に友達とキャンプファイヤーをする時にも、孫娘のエミリーが日本へ訪れた時に皆で泊まりに来た時にも対応はしてきたが、その時は花輪から電話で連絡があったため、すぐにキャンプファイヤー用の食材や道具は揃えられた。しかし、今日は急に花輪達が押し掛けてきたので、食事の予定を当初と変更せざるを得なかった。しかし、食材は揃っていたので、食事が四人、自分を入れて五人分作る事には困らなかった。
「ドウゾ、お召し上がり下さい!」
「あ、ありがとうございます・・・。すみません、急に来て、こんなもてなしてもらって・・・」
 永沢の父は申し訳なさそうに礼を言った。遠く離れるなどまるで疎開だった。
「イエ、イエ、いいんです。ところでタイヘンなメにお遭いしているというのは?」
「実は、知り合いに命を狙われていまして・・・」
「マア、それは恐ろしいですね・・・!!」
「ええ、その人は昔、戦争をやっている時の町内会長の息子なんですが、私の家族がその時、戦争に反対していたために、その恨みか何かで私らを殺そうとしているのです」
「そうでしたか・・・」
 メアリーも表情が暗くなった。自分も昔は戦争の恐怖を経験している。アメリカは、最終的に戦争に勝利したとはいえ、戦時中はそれでも地獄だった。アメリカは日本と異なり、食料なども兵隊のために使われて国民がひもじい思いをするという事は少なかったが、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦などを聞いて戦争の恐ろしさを思い知ったのだった。さらに後に広島・長崎に落とされた原爆を被爆した人々の原爆症の恐ろしさとそれによる被爆者差別、沖縄戦による住民虐殺などを聞いて日本の被害にも悲観的にならないわけにもいかなかった。戦争に反対する者は悍ましい拷問を受けていた。自分も嫌な事を思い出してしまい、物思いに耽ってしまった。

 花輪家の別荘は、お通夜のようなムードを演出していた。
「息子たちは本当に大丈夫かしら・・・」
 永沢の母は息子を手放し、今殺されていないだろうかと心配になり、号泣した。
「しかし、纏まっていては俺達は皆殺しになる。別々になった方が奴らは全員探し出すのに苦労するはずなんだ。それに君男には藤木さんとこで、太郎は城ヶ崎さんとこで匿ってもらえているさ」
 永沢の父が妻を励ました。
「え、ええ・・・」
「君男、太郎、無事でいてくれよ・・・」
 永沢の父は息子を危険な場所に残した事への申し訳なさがあったが、二人の無事を祈っていた。

 藤木は旅館で堀に電話をしていた。
「もしもし、堀さん」
『あら、藤木君。どうしたの?』
「明
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