第一話 やり直し、死に戻り。
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かったのか?
「それにしても君は自分が記憶喪失だというのに、とても冷静だね」
『そうか?』
「そうだとも。君は自身の記憶の欠落に疑問を抱かないのかな?
私なら発狂しかねない状況だよ」
記憶喪失。そう、俺は記憶を喪っている…筈だ。その筈なんだが……何故か、とても冷静で、自分でも驚くほど自然体だった。いや、記憶を喪う前の自分を知らないから詳しくは解らないが、今の俺はとても冷静だと思う。
『なんでだろうな、なんか…落ち着くんだ』
「ほう?」
『頭の中に余計な記憶────情報が無くなってるせいかな。妙に清々しい気分なんだ』
何らかの呪縛から開放された…って事なのだろうか。思い詰めることも悩むことも何もない。頭の中に余計な異物が入っていないと感じられる程、クリアな思考回路だった。
「それもまた一興というヤツなのかな、」
『どうだろうな。まぁ、今の俺は記憶喪失に疑問を抱いてはいるが、嫌悪感は抱いていないってのは確かだな』
「ふふ。その精神力には感服するよ」
『うっせぇー。てか、俺の記憶の事はどうでもいい。本題に戻ろうぜ』
「そうだな。だが、その必要は無くなったよ」
男は右手を差し出し、いつの間にか────俺の額に触れていた。
「これは不本意だが、本意でもある。君は可能性を持った少年だ。王の素質を持ち、常人とは掛け離れた価値観を持っている。素質としては充分過ぎると言っていい。まぁ、少し物足りないとは感じたがね」
男の放つ言葉と同時に、男の右手から何かを感じる。そして、それは俺の身体の中に入り込んできた。
『────────────────────!?』
痛みはない。不快感も感じていない。だが、これは……?
「さぁ、少年よ。君は今から────王となった……………?」
アレ?という感じで男はコチラを見つめる。そして何とも言えない表情で。
「これは、どういう事だ?」
理解不能、有り得ないといった素振りだった。慌てる程ではないが、動揺する位は驚いている様子で男は。
「君は…まさか、愚者の王……なのか?」
『愚者の王?』
愚か者の王様?意味の分からない発言だった。いきなりなんだ?
『なぁ。何が、どうなってるんだ?』
あの男は、俺に何かをした。恐らく『力』を授けた…のだろう。だが、身体的な変化はない。
男は顔を顰めている。少しにやけているようにも見えるし悩んでいるようにも見える。数秒ほどブツブツ…と小言を零すと男は。
「失礼、少し取り乱した」
『……?』
「君は…いや、貴公は生まれながらの王のようだ。それも「異質」で「傲慢な」「愚者」ときた。成程、あの魔女が、私の元へ連れてきたのはそういう事か!」
男は怒り────微笑み、落胆し────恐怖した。
相反する感情を暴走させ。
俺の目を見て、
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