銀河帝国、ホルスト・ジンツァー大佐
赤毛の驍将
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ジークフリード・キルヒアイスに、抜かりは無かった。
僕の話を聞いた直後から、動いていた。
最悪の事態を想定して、対策を立てる。
どの世界にも通用する鉄則、当たり前の常識なんだけど。
実際、行動に移すのは難しい事だよね。
でも、キルヒアイスは、違ったんだ。
僕の話した内容を、想定の範囲内と判断してくれた。
実際に起こり得る、と認めてくれたんだ。
打ち明けてくれなかったのは、残念だけど。
どうすれば、良いのか?
僕は全然、考えてもみなかった。
うろ覚えの通りに、大勢の人が死んで行ったのに。
大勢の人を救う事だって、できた筈なのに。
どうすれば救えるか、考えなかったんだけれど。
赤毛の上司は、僕の知らないうちに、様々な布石を打っていた。
僕の話に信憑性がある、と認めた直後から。
手の届く範囲で、用意周到に。
犠牲者を減らす為の方策を考え、種を蒔いていたんだ。
僕は、知らなかったけど。
最初は、疑っていたらしい。
そりゃ、そうだよね。
自分が若死にする、って言われたんだ。
そうならないように、気を付けるのは当然だけど。
否定したくなるのも、同じくらい当然だと思う。
キルヒアイスの蒔いた種は、確実に育っていた。
一見、何も変わっていないように見えたけど。
目立たないところで、波及効果は拡がり続けていた。
僕の上司は帝国最大の門閥貴族に仕え、陣営を支える有能な人物と接触を図った。
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公に仕え、部下からの人望も厚い忠臣。
アンスバッハ准将との対面に漕ぎ着け、或る提案を示した。
ガイエスブルク要塞の陥落後、自分の生命を奪った張本人なんだけど。
クロプシュトック事件の際、ラインハルトとフレーゲルの衝突を仲裁した人物でもある。
尊大で傲慢な貴族の癇癪に耐え、現実を認識する相手の同意を得ていたんだ。
接触を図った相手は、キルヒアイス殺害の張本人だけじゃない。
洞察力に優れ主君に忠節を尽くす有能な部下、アルツール・フォン・シュトライト。
ラインハルトの暗殺が唯一、勝利を望めると見抜いた現実主義者アントン・フェルナー。
前線で挙げた武勲じゃなくて、後方勤務が中心だったんだけど。
平民出身なのに、30代で大佐に昇進した有能な参謀レオポルド・シューマッハ。
水色の瞳が印象的な貧乏貴族出身の艦隊指揮官、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト。
帝国軍の宿将、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督にも働き掛けていたんだ。
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