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儚き想い、されど永遠の想い
236部分:第十八話 相互訪問その三

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第十八話 相互訪問その三

「薔薇戦争というものがありました」
「薔薇戦争ですか」
「はい、そうした戦争がありました」
 かつて英国であった王位を争う戦いのことだ。互いに赤薔薇、白薔薇を象徴として争った為この名前になった戦争である。
「そしてその戦争からです」
「どうなったのでしょうか」
「あの国では薔薇は一つになりました」
「薔薇が一つにとは」
「それまでは赤薔薇と白薔薇」
 その二つにだというのだ。
「別れていたのですが」
「それが一つになったのですね」
「今ではあの国の薔薇は赤と白、二つが一つになっているのです」
「贅沢ですね。それは」
 二色の薔薇が一つになっていると聞いてだ。真理はこう返した。
「とても」
「そう思われますか」
「はい、とても」
 実際にそうだとも答えるのだった。
「私はどちらかを選べと言われると」
「困りますか」
「どちらの薔薇も非常に素晴しいので」
 赤薔薇も白薔薇もだというのだ。
「ですから。そう言われると」
「そうですね。薔薇はですね」
「罪な花ですね。あまりにも奇麗で」
「選べませんね」
「とても」
 それはだ。できないというのだ。
「ですから。とても」
「実はそれはです」
 義正は真理のその話を受けてこう話した。
「我が家も同じでした」
「八条家もですか」
「赤薔薇と白薔薇どちらか」
 それを選ぶとなるとどうなったかというのだ。
「選べずに」
「それでどうなったのでしょうか」
「両方でした」
「両方!?」
「はい、両方です」
「では赤と白と」
 真理もその話を聞いて述べた。
「その両方の薔薇がですか」
「はい、庭に咲かせました」
「そうだったのですか」
「優柔不断でしょうか」
 義正は少し苦笑いになってこう述べた。
「これは。それとも」
「それとも?」
「贅沢でしょうか」
 こちらも話に出すのだった。
「両方の薔薇を咲かせたのは」
「そうですね。この場合は」
「どう思われますか?」
「贅沢ですね」
 にこりと笑ってだ。そちらだと答える真理だった。
「それもかなり」
「そう思われますか」
「薔薇は。赤だけでも白だけでも」
「贅沢なものですね」
「花はそれだけで贅沢です」
 花の美しさ、それ自体がだというのだ。
「そしてその中でも薔薇は」
「とりわけ贅沢な花ですね」
「あの奇麗さと豪奢さ」
 その二つを併せ持った花、それが薔薇だというのだ。

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