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報復
第三章
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「これが項羽か」
「何ということをするのだ」
「秦の全てを焼き尽くした」
「その何もかもを」
 こう言って唖然とするばかりだった、だがその彼等にだ。
 項羽は馬上から傲然と胸を張って言った。
「白起がしたことだ!」
 こう言った、そして胸を張ったままその場を後にした。
 そして夜だった、自身の天幕の中にいる彼の前にだ。
 一人の秦の黒い鎧と服の男が現れた、項羽はその男を見てすぐに言った。
「白起か」
「わかるか」
「言われずともだ」
 項羽はその白起を見据えて言葉を返した。
「わかる」
「そうか」
「それで何の用だ」
 項羽は白起にさらに問うた。
「わしが秦の兵達を殺し生き埋めにしその全てを焼いたことを責めに来たか」
「違う、わしの結末を知っているか」
「ふん、国に見捨てられて挙句に自刃したな」 
 項羽は白起に傲然とした顔で返した。
「そうなったな」
「知っているか」
「聞いている、貴様なぞに相応しい最後だ」
「そう言うか」
「敵の兵を殺し陵墓を焼き生き埋めにした貴様にはな」
「貴様はそのわしと同じことをした」
「貴様がしたことをし返しただけだ」
 項羽は悪なぞ全く感じずに白起に返した。
「それの何が悪い」
「言うものだな、しかし後悔はしないな」
「後悔だと?」
「わしの様になってもだ」
 自分の様な結末をとだ、白起は項羽に問うた。
「それでもいいのだな」
「貴様の様な終わりか、あるものか」
 項羽は白起のその問いに不遜なまでに強い笑みで返した。
「わしは貴様がしたことを秦に返したまで、そして貴様よりも強い」
「わしよりもか」
「貴様以上に勝利を収め貴様の国を倒した」
 だからだというのだ。
「そのわしが貴様より弱いと思うか」
「確かにな、わしと貴様がそれぞれ軍を率いて戦えばだ」
「わしが勝つな」
「貴様の采配と武勇は桁が違う」
 それこそというのだ。
「戦の場で戦えば貴様に勝つことは出来ん」
「長平でわしが趙にいれば貴様の首を取っていた」
「そうであろう、しかしな」
「しかし、か」
「貴様はそのわしと同じことをした」
 またこのことを言うのだった。
「ならばわしと同じ結末をだ」
「迎えてもか」
「後悔はしないことだ」
「わしは後悔なぞせん」
 項羽の言葉はここでも強かった。
「そもそもわしの人生に後悔なぞない」
「死ぬその時までか」
「そのことを貴様に見せてやる」
「言ったものだな、ではだ」
「これで帰るか」
「そうしよう、言いたいことは終わった」
 白起自身のそれがというのだ。
「ならいい」
「そうか、ではな」
「帰るとしよう」
 冥界、そこにというのだ。
「これよりな」
「ふん、会いたくなれば何時でも来い」

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