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髭男
第四章

[8]前話
「女の人だったらしいから」
「ああ、その話か」
「あの話聞いたんだな」
「結構有名な話だけれどな」
「実際どうなんだ?」
「あの人本当に女の人か?」
「さて、どうなのかしら」
 謙信もそこはいささか疑問形で答えた。
「実際のところ」
「わからないのかよ」
「その辺りは」
「そうなのかよ」
「それでもね」
 真相はわからない、しかしというのだ。
「そうかも知れないって思って」
「髭剃ったのか」
「謙信さんが本当に女性かも知れないって思って」
「それでか」
「そうなの、あの肖像画についても調べたら」
 彼も影響を受けた謙信のあまりにも有名な肖像画だ、そこでの謙信は顔の周りに見事な髭をたくわえている。
「後で描かれたものらしいし」
「実際にあの髭だったとはか」
「わからないか」
「そうなんだな」
「だからね」
 それでというのだ。
「剃ったのよ」
「あのダルビッシュさんみたいな髭をか」
「あえてそうしたのか」
「そうしたわ、色々皆にもアドバイス貰ったけれど」
 それでもというのだ。
「やっぱりあたくし的にはね」
「髭は剃っておく」
「そうするんだな」
「謙信さんが女の人だった場合も考えて」
「肖像画も実際どうだったかわからないからか」
「そうするわ、そしてね」 
 謙信はこうも言った。
「もっと大事なこともわかったわ」
「もっと大事なこと?」
「それ何だよ」
「ええ、中身よ」
 それのことだというのだ。
「謙信さんは立派な人だったわね」
「ああ、戦争に強いだけじゃなくてな」
「あくまで義を大事にしてたからな」
「戦はしても無駄な殺生はしない」
「嘘を言わない、裏切らない」
「忠義も大事にしていたな」
「毘沙門天も真剣に信仰してな」
 その信仰が為に生涯妻帯しなかった程だ。
「そう考えるとな」
「凄く立派な人だな」
「信玄さんや信長さんも凄いが」
「謙信さんも立派だな」
「あんな凄い人そうはいないぜ」
「中身をそうなるわ」
 謙信の様にというのだ。
「これからは」
「そうか、じゃあな」
「今度はそっちで頑張れよ」
「名前通り謙信さんみたいな人になれよ」
「絶対にな」 
 友人達も決意した謙信にエールを送った、そして実際にだった。
 謙信は上杉謙信のその生き様を学び彼の様になろうと生きた、そうして周囲に立派な人物と言われる様になった。髭から中身へと移っていって。


髭男   完


                2017・6・23
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