第三章
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「だからよ」
「馬鹿だからって」
「だからよ」
まさにそれでというのだ。
「うちの兄貴に言うのはね」
「駄目なんだ」
「そうよ」
何があってもというのだ。
「もうね」
「そんなに駄目?」
「絶対にって言ってたでしょ」
七海の言葉の調子は普遍であった。
「会ったら駄目だから」
「そうなんだ」
「大輝君のお家はご両親と妹さんお二人よね」
「そうだよ」
「けれどうちは違うから」
「そんなに危ないお兄さんなんだ」
「馬鹿だって言ったでしょ、人の道は外れていないけれど」
元不良であってもだ。
「人間として馬鹿を極めてるから」
「だからなんだ」
「そう、だからよ」
それでというのだ。
「うちに来てもね」
「お会いするのはご両親だけで」
「兄貴はね」
彼はというと。
「絶対に駄目だから」
「お兄さんに紹介は」
「最初からしないから」
「じゃあそういう風にだね」
「お父さんとお母さんには紹介するから」
こう話して実際にだった、七海は大輝を自分の両親に兄が編集者との打ち合わせで家にいないその時を見計らって自宅まで呼んで紹介してこちらは上手くいった、大輝の家の方でも同じだった。
それで七海は安心していたが用心には用心を重ねて。
普段は家で仕事をしている兄に気をつけて外で会うことが多かった、この日も高校の帰りにデートをしていたが。
喫茶店で二人で楽しく話をしている時にだ、横からいきなり聞き慣れた声が来た。
「七海、そいつは誰だ!」
「その声は」
「俺だ!」
伸也だった、自分達の席の左を見ればすぐそこに仁王の顔で仁王立ちしていた。
「今日は編集者さんとネームの打ち合わせをしていた」
「このお店で」
「そうだったんだよ」
「くっ、迂闊だったわ」
ここで七海は歯噛みして言った。
「このお店がお兄ちゃんの行きつけのお店だったなんて」
「これも天の配剤だ」
「何が配剤よ」
「その男は何だ」
大輝を指差して言うのだった。
「一体」
「彼氏よ」
七海は居直った様に返した。
「お兄ちゃんの予想通りよ」
「おい、言っていたな」
伸也は妹の悪びれない返事に怒った顔で返した。
「交際相手は絶対に俺に紹介しろってな」
「紹介してどうするつもりよ」
「悪い奴なら容赦しない」
それこそというのだ。
「絶対に認めないしだ」
「交際をよね」
「そうだ、そしてそいつは袋だ」
「それで紹介したら?」
七海は一応その場合を尋ねた、考えてもいなかったが。
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