第一章
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馬鹿兄貴の横暴
舞阪日七海の兄伸也の仕事は少女漫画家だ、二本の連載を持っていて中々忙しく名前も知られている。ペンネームは舞阪可憐という女性にしか思えないものだ。
しかしその彼についてだ、七海はよく兄本人に言った。
「何で少女漫画家になったの?」
「漫画が好きだからだ」
伸也はいつもこう答えた。
「だからだ」
「それで少女漫画もなのね」
「ああ、好きでな」
愛読書は花とゆめ、ちゃお、りぼん、マーガレット、別冊少女フレンドといったもので持っている単行本も多い。
「よく読んでてな」
「少女漫画家になったのね」
「そうだ」
「元暴走族なのに」
実は高校時代までは近辺では有名な不良だった、今時珍しいリーゼントにボンタンに長ランという恰好だった。尚髪型は今もリーゼントで眉毛も細くしている。面長で険しい顔つきである。
「それでもなの」
「悪いか」
「凄く違うって感じよ」
こう兄に返すのだった。
「それなら漫画家になってもね」
「不良漫画か」
「そっちでしょ」
「そうした漫画も好きだがな」
「じゃあそっち描けばよかったじゃない」
兄に相応しいというのだ。
「モノホンのガチだったし」
「仕方ないだろ、絵柄がな」
「まんま少女漫画で」
「好きだしな」
その少女漫画もだ。
「そうなったんだよ」
「編集部に送ったら」
「ああ、デビューさせてもらってな」
「今は連載二本」
「いい感じで描いてるぜ」
「全く、世の中わからないわ」
七海はどうかという顔で言った、黒く細い髪質の髪の毛をかなり長く伸ばしている。白い顔は頬が少し膨らんでいて奇麗な楚々とした感じの目と細い眉毛が目立つ。背は一六〇程である。服装は可愛らしい感じだ。
「お兄ちゃんがそうした漫画家になるなんて」
「じゃあ不良漫画も描けってか」
「そっちの方がいいんじゃ」
「俺の絵柄でか」
「絵柄って大きいのね」
「じゃあさいとたかを先生の絵で下品ギャグやれるのかよ」
伸也は七海に強烈な例えを出した。
「それは」
「無理よね」
七海もすぐに答えた。
「あの人の絵で下品ギャグは」
「コロコロにあるみたいなな」
伸也はこの雑誌も毎月チェックしているのだ。
「ゴルゴとかがあんなんするんだぞ」
「想像するだけで何かが違うわ」
「だから俺の絵だとな」
「不良漫画はなの」
「無理だって言われてるんだよ」
「立原あゆみ先生みたいには」
「どうだろうな」
この人は長い間極道漫画を描いていてヒットしている。
「それはわからないな」
「というか少女漫画がね」
伸也にはというのだ。
「どうにもなのよ」
「合わないか」
「外見にも性格にも」
その両方でというのだ。
「読者さんはどう思
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