第一章
[2]次話
年上メイド
南雲家は資産家として知られ家は屋敷と言えるまでのものだ、洋館であり庭も洋風である。
それで家の使用人は執事やメイドといったものだ、和風に使用人ではなくそちらになっている。
だから当主の孫であり招来家を継ぐことになっている久修の周りにもメイド達がいる、まだ小学生だがメイド達に囲まれていてだ。
メイドについてだ、通っている相当な格式のある学校でクラスメイト達に対してこんなことを言っていた。
「メイドっていいよね」
「南雲君のお家ってメイドさんいるんだってね」
「それも何人も」
「うん、十人いてね」
その他にも執事もいる。
「それで皆頑張ってくれてるんだ」
「何か凄いね」
「メイドさんが十人もいるなんてね」
「南雲君のお家って本当にお金持ちだね」
「そうだね、お祖父ちゃんが頑張ってくれてるからかな」
純粋な彼はこう考えていた。
「そのせいでね」
「お金持ちでだね」
「お屋敷にはメイドさんが十人もいて」
「それで働いてもらってるんだ」
「そうなんだ」
「うん、嬉しいよ」
満面の笑顔でだ、久修はこうも言った、ふくよからおっとりとした顔立ちで服装も髪型も気品がある。
「メイドさん達皆奇麗だし。それにね」
「それに?」
「それにっていうと?」
「沙織さんが特にね」
家のメイドの一人の名前を挙げたのだ、ここで。
「奇麗で働き者で優しいんだ」
「ふうん、その沙織さんって人がなんだ」
「一番奇麗でだね」
「一番働き者なんだ」
「そうなんだね」
「本当に凄い人だよ」
明るい笑顔のまま言うのだった。
「あの人はね」
「何かね」
ここでクラスメイトの一人がこんなことを言った。
「南雲君その人が好きみたいだね」
「うん、好きだよ」
あどけなくだ、久修は彼に返事をした。
「本当にね」
「奇麗で働き者だから」
「それに優しいからね」
それ故にというのだ。
「だからね」
「大好きなんだね」
「そうだよ」
その通りだというのだ。
「本当にね」
「ううん、そうなんだ」
「そう、けれどね」
ここでだ、久修は悲しい顔になってこうも言った。
「何かもう少ししたらね」
「もう少し?」
「もう少しっていうと?」
「結婚してね」
そうしてというのだ。
「メイドさん辞めるらしいんだ」
「あっ、そうなんだ」
「南雲君のお家にいなくなるの」
「そうなるの」
「そうらしいんだ」
悲しい顔のまま話した。
「どうもね」
「ううん、それじゃあだね」
「その沙織さんともだね」
「もうすぐお別れなんだ」
「そうなるんだ」
「そうみたいなんだ」
こう言うのだった。
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