第二章
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「若しテアドラが外見だけの女なら」
「最初から妻にしようとはしないな」
「遊ぶだけです」
それだけだというのだ。
「あくまで」
「そうだな、そなたもそうするな」
「妻になぞしません」
「私もわかっている、だからだ」
「テアドラとの結婚をですね」
「許そう」
こう言って実際にだった、皇帝ユスティヌスは甥とテアドラの結婚を許した。こうしてユスティニアヌスはテアドラを妻に迎えたが。
その時もだ、帝国の者達はどうかと話した。
「確かにこうしたことはあった」
「この国の都がローマにあった頃にもな」
ビザンツ帝国はローマ帝国だ、ローマ帝国が東西に分かれた時の東の方であり彼等は自分達をローマ帝国と考えているのだ。
「こうしたことは何度かあった」
「皇帝やその後継者が身分の低い女を妃に迎える」
「ローマにはそうしたこともあった」
「だが今もとなると」
「どうなのか」
「ましてやあの女は違う」
「これまでどれだけの浮名を流したか」
女優としての仕事の中でというのだ。
「メッサリーナもかくやという程だ」
「クラウディウス帝の皇后だったあの女と」
稀代の淫婦として名を残している、何と自ら娼館に入りそうしてそこで多くの男を相手にしていたと言われている。
「その女の再来になるのではないのか」
「どうかと思うが」
「ユスティニアヌス様は何を考えておられる」
「あの様な淫婦を正妻に迎えるなぞ」
「未来の皇后に」
こう口々に言う、だがやがて皇帝ユスティウスは世を去りそうしてだった。ユスティニアヌスが皇帝となった。
誰もが皇后に不安を覚えた、だがテアドラは浮名なぞ全く流さず常に夫の傍にいてその政を助けていた。
ユスティニアヌスは生真面目に政を行っていたがその彼を皇后として将軍べリサリウスと共に支えていた。その姿を見てだった。
かつて彼女をどうかと不安視していた者達もだ、その見方を変えた。
「これはどういうことだ」
「皇帝を見事に支えておられる」
「皇帝の有力な助言者ではないか」
「まるで宰相ではないか」
「皇帝を傍らから支えられている」
「何と見事な皇后だ」
こうも言うのだった。
「あの方は」
「まさに皇后のあるべきお姿だ」
「あの方とベリサリウス様がおられればな」
「皇帝も安心だ」
「全くだ」
こう言ってテアドラを認める様になっていた、テアドラは娼婦達への救済も自ら行い彼女達からも慕われた。
だがある時だ、帝都コンスタンティノープルの大戦車競技場であるヒッポドロームで事件が起こった。
競技に熱中している観衆を見てだ、兵達は次第に不安を感じだした。
「今日は熱中し過ぎだな」
「そうだな」
「いつも以上に」
「また騒ぐか」
「乱が起こるのではないか」
そ
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