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内助の功
第一章
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               内助の功
 当初この婚姻を聞いた時帝国の貴族達そして平民に至るまでがまさかと思った。何しろユスティニアヌスは皇帝ユスティヌスの甥であり皇帝の補佐役でもある。しかも皇帝には子供がおらず後継者にも皇帝自身によって定められている。
 だがそのユスティニアヌスが選んだ妻即ち将来皇后となる女がだ。
「テオドラだというのか」
「あの女優の」
「常に男の噂が絶えないが」
「何かとな」 
 当時女優は春をひさぐのも仕事のうちでテオドラも例外ではない、それどころか彼女は歌も踊りも笛も得意ではなくパントマイムとこちらで有名だった。
 そのテアドラがだ、将来の皇后になるというのだ。それで誰も驚かない筈がなかった。それで帝国の者達は口々に言ったのだ。
「何かの間違いではないのか」
「幾ら何でも」
「それは有り得ない」
「ましてユスティニアヌス様は非常に聡明な方だ」
「あの様な女を妻に迎えるなぞ」
「何かの間違いではないのか」
 こう思った、だがこの噂は真実だった。
 ユスティニアヌスは実際にテオドラと結婚することになった、これには多くの者が反対していた。当時のビザンツ帝国の法律でもだ。
「身分が違い過ぎる」
「皇帝の後継者と女優だぞ」
 女優の身分は帝国では極めて低かったのだ。
「それでどうして結婚出来る」
「出来る筈がない」
「愛人ならともかくだ」
「正妻、将来の皇后なぞ無理だ」
「ユスティニアヌス様はお考えをあらためるべきだ」
「それしかない」
 多くの者が言い皇后もだった。
 強く反対していた、だが皇帝は違っていた。
 自らユスティニアヌスを部屋に呼んでだ、穏やかな声でこう言った。
「朕は常にそなたの味方だ」
「そう言って頂けますか」
「貧しい農民だった朕は軍に入り将軍になったが」
「皇帝になられたのはですか」
「そなたの助けがあってからだ、それにだ」
 それだけではなく、というのだ。
「朕はただの百姓だった、百姓で字を読み書き出来る者はいないが」
「それをですか」
「学問を修めているそなたはいつも朕の傍にいて助けてくれている」
 補佐役、後継者としてだ。皇帝が皇帝でいられるのも常にユスティニアヌスが傍にいてくれているからだというのだ。
「だからだ」
「叔父上はですか」
「常にそなたの味方だ、だからな」
「テオドラとの結婚をですか」
「認める、法は変えよう」
「宜しいのですか」
 ユスティニアヌスは叔父に思わず聞き返した。
「そうされて」
「構わない、また言うが」
「叔父上は私の味方ですか」
「常にな、それにそなたもではないか」
「叔父上のですか」
「常に助けてくれている、だからだ」
 それ故にというのだ。
「そなたの為ならな」
「法もです
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