第二章
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「だから心置きなく護国の鬼となれる」
「そう思うからか」
「そうだ、俺は腹を切りだ」
そのうえでというのだ。
「国難に殉じそのうえでだ」
「靖国においてか」
「皇国を護ろうと思う」
「国難、これ以上の国難はない」
結城は河原崎の言葉を聞いて彼に応えた。
「敗戦はな」
「しかもそうなったのは何故か」
「言うでもない、我々が至らなかったからだ」
彼等軍人がというのだ。
「その為だ」
「その責も負う、そしてだ」
「靖国に入るか」
「そうしたいのだ」
「そうか、貴様の考えは聞いた」
結城は河原崎に確かな声で応えた、ここまで聞いたうえで。
「全てな、しかしだ」
「腹を切ることはか」
「考えることだ」
こう言って止めるのだった。
「いいな」
「それは友としての言葉か」
「そうだ、友として言う」
実際にというのだ。
「俺は貴様が腹を切るのを止める」
「生きてそうしてか」
「捲土重来という言葉もある」
「生きてお国の再興に尽くせというのか」
「確かに日本は敗れた」
このことは紛れもない事実だ、結城も玉音放送を聞いてこのことを認めるしかなかった。そのうえで先程は泣きさえした。
「だがな」
「まだ日本はあるからか」
「そうだ、ここはだ」
「復興の為にか」
「そのうえでまた戦ってもいいではないか」
今は敗れたがというのだ。
「そうすればいいのではないか」
「貴様はそうした考えか」
「今はこの上なく無念だ、だがな」
「その無念に耐えてか」
「生きて復興に尽くすべきではないのか」
「そして再びか」
「そうしてもいいのではないのか」
こう河原崎に言うのだった。
「俺はそう思うのだが」
「貴様は生きるのか」
「無論俺にもそうした気持ちがある」
河原崎と同じものがというのだ、腹を切りそのうえで敗北の責を取りそうして護国の鬼になるそれがだ。
「それはな、しかしだ」
「それでもか」
「俺はそうした考えの方が強い、それに妻も子もいる」
「そしてご両親もだな」
「俺は長男だしな、だからな」
彼等を残す訳にはいかないというのだ。
「俺は生きる」
「貴様はか」
「そうしたい、だから貴様もだ」
「生きてか」
「復興の為に尽くしてだ」
「再び戦う、か」
「そうすればいいのではないのか」
河原崎の目を見て真摯な顔で語った。
「今腹を切らずにか」
「そうすべきか」
「そう思うがな、俺は」
結城の目は河原崎の目を見たままだった、そのうえでの言葉だった。
「だからだ」
「そうか、しかしだ」
「どうしてもか」
「少し考えさせてくれ」
実際に考える顔でだ、河原崎は結城に言葉を返した。
「今はな」
「そしてか」
「決断したい、そうさせ
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