第四章
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「どうにも」
「さっきは皆がいたから」
「観光で観ています、だったけれど」
「こうして静かな中で観るとね」
「やっぱり違うわね」
「そうよね」
こう二人で話した、そして。
東大寺を出てだ、そのうえでだった。
日海夏からだ、こう優に提案した。
「正倉院行く?」
「午後に行くわよ」
優は微笑んで日海夏に答えた。
「あそこは」
「あっ、そうだったわね」
「だから特に行くことないわよ」
「じゃあ何処に行こうかしら」
「他の名所も大抵後で回るし」
それか既に回っている。
「もうね」
「お昼にする?」
「そうする?」
こう日海夏に提案した。
「一緒に」
「元々そうした時間だし」
「さもないとお昼食べそびれるしね」
そうした最悪の展開になるというのだ。
「だからね」
「ここは、なのね」
「二人でお昼にしましょう」
学校側から貰った弁当を食べようというのだ、幕の内だ。
「そうしましょう」
「それじゃあね、ただね」
「ただ?」
「いえ、よくなかった?」
日海夏は考える顔になって優に言った。
「今さっき大仏さんを見て」
「私達がいない大仏殿で」
「ええ、よくなかった?」
こう聞くのだった。
「皆で観る時よりも」
「そうね、観光で観るとね」
どうしてもとだ、優も日海夏に自分が観て感じ取ったことを話した。
「がやがやしてて見て凄いって思うだけで」
「それだけだけれど」
「それはそれで勉強になってもね」
「勉強ってだけで」
「特に感じないわね」
それ以上のものはというのだ。
「特にね。けれどさっきは」
「二人だけで観たら」
「不思議な感じしたわね」
「静かで神々しくて」
「如何にも仏様って感じがして」
「不思議な気持ちだったわね」
「そうよね、そう思ったわ」
優も日海夏に答えた。
「私にしても」
「動いたり喋ったりはしなかったけれど」
「仏様を感じたわね」
そのこと自体をというのだ。
「そうだったわね」
「あんな気持ちになるなんてね」
「思わなかったわわ、けれど」
「また観たいわね」
日海夏は優に微笑んで言った。
「そうした仏様」
「そうね、神聖なものを感じられるから」
「神聖なものって本当にあるのね」
このこともだ、二人は今わかったのだ。
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