第六章
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「そうしなさい、いいわね」
「仕方ないわね」
大阪の妖怪の棟梁にまで話がいくとなるととだ、高女も引き下がるしかなかった。それでこう恵子に言った。
「約束するわ、もうね」
「二度とよね」
「この部屋に悪戯しないから」
窓の外に出て驚かせることはしないというのだ。
「絶対にね」
「約束したからね」
「妖怪の約束は絶対よ」
高女の方から言った。
「だからよ」
「もうここには出ない」
「ええ、ヤクザ屋さんの事務所にも出るわ」
そこの窓にというのだ。
「それならいいでしょ」
「最近かなり減ったけれどその方がずっといいわよ」
大阪も暴力団員はかなり減った、それだけ世の中がよくなっていると考えればいいことであろうか。
「驚かすにも相手を選びなさい」
「あんたの部下よりも」
「善良で真面目な市民よりもよ」
それこそというのだ。
「悪い人達を驚かしなさい」
「確かに。その方がいいわね」
「それじゃあね」
そうしろとだ、恵子も言ってだった。
高女がさよならと言って姿を消したのを見届けた、その全てを見終わってから佳彦そして晴香のところに戻って話した。
「この通りよ」
「もうこれで、ですか」
「あの妖怪出てこないから」
佳彦にこのことを話した。
「安心してね」
「若し出て来たら」
「私がまたここに来るし大阪のね」
「妖怪の棟梁さんにもですか」
「言うから」
「そんな妖怪いるんですか」
「いるわよ、大阪城にね」
そこにというのだ。
「住んでるのよ」
「初耳ですけれど」
「知らないの?大阪だと常識よ」
恵子が言うにはだ。
「あそこに豊国神社があるでしょ」
「じゃあ大阪の妖怪の棟梁って」
「正確に言うと神様だけれどね」
神社に祀られているからだというのだ。
「あの人よ」
「そうだったんですね」
「何しろ今の大阪の基礎を築いた人でしょ」
「ですよね、大阪は何といっても」
「だからあの人はね」
「大阪の妖怪の棟梁でもあるんですか」
「そうなのよ」
こう佳彦に話すのだった。
「あの人はね」
「成程、覚えておきます」
「先輩このこと知らなかったんですか?」
晴香は佳彦がこの話を知らなかったことに少し驚いて聞き返した。
「そうだったんですか」
「うん、初耳だったよ」
「大阪では常識ですよ」
「元々生まれ岡山の方だから」
「だからですか」
「知らなかったよ、岡山じゃ山本太郎左衛門さんだから」
妖怪達の棟梁はというのだ。
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