223部分:第十六話 不穏なことその十五
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第十六話 不穏なことその十五
「それもだ」
「夢の様な話に思えますが」
「何、鉄道も最初はな」
「夢だったというのですね」
「夢は現実になる。文学だけではない」
産業といった。これ以上はないまでに現実のものもだというのだ。
「だから。車も」
「きっとですね」
「我が国で普通に走る様になる」
そこにだ。希望を見て。妻にこんなことも話した。
「東京の道だが」
「あの広い道ですね」
当時としては途方もないまでに広い道だった。その広い道の話だった。
「あれは確か山縣公が決められたのですね」
「あの広い道でも狭くなるかも知れない」
「まさか。それは」
「車が増えれば」
ひいてはだ。日本が豊かになればだ。
「あの道も狭くなるだろう」
「では線路も」
「八条鉄道は複数線を標準にしている」
線路は一本ではないのだ。常に二本用意しているのだ。
「あれは正解だったな」
「はい。一本では行き来できません」
「シベリア鉄道もそれが問題になった」
日露戦争の時の話だ。露西亜は補給はその鉄道に頼っていたのだ。
その路線は一本だった。これでは行き来ができない。このことが懸念材料になったのだ。露西亜側から見ればそうなることなのだ。
「だからだ。あえてだ」
「二本にした」
「最初からな。それと同じだ」
「最初は一本でもいいのではという意見もありましたが」
「鉄道に乗る人間は増える」
それはだ。間違いなくそうなると見て。そして実際にそうなったことだ。
「それでは一本ではだ」
「足りなくなるからこそ」
「最初から二本で考えていた」
「先見ですね」
まさにそれだった。
「あれは」
「自分でもよくやれたと思う」
「やれた、ですか」
「やったのではない」
そうではなくだ。やれたというのだ。
「本当にな」
「何故そう仰るのですか?やれたと」
「勇気のいる決断だった」
だからだ。やれたというのである。
「確かに確信していたが」
「それを実際の行動に移すのはですね」
「勇気がいた」
「実際の行動にはそうですね」
「そうだな。どうしてもな」
「ええ。しかし決断されて実行に移されて」
「本当によかった」
彼の言葉はしみじみとしたものになっていた。
「だから今があるのだからな。八条鉄道の」
「そうですね。後は」
「線路の統一だな」
今度はそれだった。具体的には線路の広さやそういったものだ。
「車両の車輪もそれに合わせてな」
「全てですね」
「線路は統一してこそだ」
「全路線で」
「そうしなければ合理的に動かせない」
この辺りもだ。重要なことだった。日本は朝鮮半島や台湾の統治において線路の規格を統一しておりそれが合理的な経営につながっている。
「
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