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千雨の幻想
8時間目
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――幻想郷、博麗神社境内――

 夜、そこでは妖怪や人間、はては妖精までも集まり騒がしくも煌びやかな宴が催されていた。
 鬼も人も天狗も、皆が等しく盃をかわし、皆が皆楽しくはしゃいでいる。

「……」

 その中で未成年という観点から一人だけ酒を飲まず、あちらから持ってきたジュースに口をつけている。
 初めは戸惑っていた千雨も慣れたもので、もうこの宴会に参加するのが当たり前となっている。
 そうやってこの騒がしい宴を楽しく見守っていた千雨に話しかける人、いや鬼がいた。

「おおぉ〜千雨〜、あんたも飲んでるかい?」

「あ、萃香さん」

 ”不羈奔放の鬼”伊吹萃香。
 両側頭部から長くねじくれた角をはやし、紫の瓢箪を携えた鬼が彼女の元へやってくる。

「いや、私は一応未成年だからさ、せめて本格的にこっちに移住するまではお酒は飲まないようにしてるんだ」

「ええぇ〜、せっかくのいいお酒なのにね」

「あはは、すいません」

「まあ仕方がないよね、……ああそうだ思い出した」

 残念がる萃香だったが急に何かを思い出し、千雨に問いかける。

「千雨さ、たしか近々京に行くって言ってたよね?」

「京……、ああ修学旅行で京都に行くって話をしたような」

「うんうん、なら一つ教えておきたいことがあるんだ」

 彼女は怪しげに、楽しそうに微笑みこう告げた。





「リョウメンスクナノカミって知ってる?」





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