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儚き想い、されど永遠の想い
211部分:第十六話 不穏なことその三
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第十六話 不穏なことその三

「革命に反対すると見なされた人もね」
「殺されますか」
「革命とはそういうものだろうね」
 苦い顔で言う義正だった。
「聞こえがいいわ実際は」
「他の存在を認めず消していくのですか」
「ギロチンはただあるだけじゃないからね」
 仏蘭西革命の象徴であるその処刑台のことも話される。
「それは粛清の為だよ」
「罪人を処罰する為のものではなく」
「いや、罪人を処罰するものだよ」
「しかし。粛清とは」
「革命に逆らうこと自体が罪だから」
 それでだ。罪人を処刑するということになるというのだ。
「そう、疑われただけでもね」
「そうして粛清されますか」
「それが革命だよ。そして」
「ソ連という国ですか」
「共産主義についてもよく考えるべきだ」
 義正の顔が強張る。共産主義そのものに対する警戒も見せていた。
「あの思想は福音なんかじゃない」
「基督教のあの様な」
「宗教も。他のあらゆる思想を否定する考えだから」
「危険ですね」
「そう、あの思想には気をつけないといけない」
 また言う義正だった。
「迂闊に盲信すると恐ろしいことになる」
「では知識人で最近」
「若い知識人の間に。流行ってるそうだね」
「大学生の間でも」
「よくないことにならなければいいけれどね」
 ここではこう言う義正だった。
「本当にね」
「よくないことにですか」
「彼等にとっても日本にとって」
 双方を危惧してだ。話す義正だった。
「本当にそう思うよ」
「左様ですか」
「この世に完璧なものはないんだ」 
 義正はこの真実を話した。
「それは主義思想にも言えるから」
「では共産主義は」
「完璧である筈がない」
 そのマルクス主義者達が言うようなだ。そうしたことは有り得ないというのだ。
「絶対にね」
「確かに。我が国には様々な宗教が存在しますが」 
 神道にしろ仏教にしろだ。宗派も考慮しての言葉だ。
「しかしです」
「それでもですね」
「その一つ一つが完璧ではないのだから」 
 それでだと話すのだ。
「それで完璧な思想というものは」
「ありませんね」
「その完璧なものを否定する」
 さらにだった。
「そうした人間はどうなるか」
「やはり粛清ですね」
「そうなる。そんな社会は御免だ」
 義正は心から言うのだった。そのこともだ。
「私はそう思う」
「左様ですか。共産主義は」
「君はどう思っている」
 佐藤にもだ。問うたのだった。
「共産主義については」
「私は既に信じているものがあります」
 確かな言葉でだ。佐藤は主に話した。
「それはです」
「それは?」
「八条町に教会ができていまして」
「教会?基督教の?」
「いえ、天理教です」
 
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