0293話『夕張の疲れ』
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の顔が真顔になっていた。
え? まさか図星だったのかしら?
「そう……そうなのかもね。提督の存在は私達と違ってひどく曖昧なのよ」
「曖昧って……」
「夕張も感じない? 提督は榛名さんの身体に魂だけが入っているようなものなのよ? もしなにかのはずみで提督の魂が榛名さんから出て行ってしまってもおかしくないのよ……」
それで明石は少しだけ悲壮感を漂わせながら顔を手で覆っている。
これはかなり重症かもしれない……。
明石がここまで思いつめていたなんてあたしも想像していなかった。
それが今日までの開発の力となっていたのね。
「やっぱり考え過ぎよ! 明石らしくないわよ?」
「そうなんだけど一度そんな考えを持っちゃうとどうしてもその考えを拭いきれなくて……そうなったらと思うともう胸がとても痛くて……」
それで明石はとうとう涙を流し始めてしまったではないか。
まったく考えすぎったら!
「あーあー……もう、そんなもしものことで泣かないの。大丈夫よ。提督はあたし達の前からはいなくなったりしないから」
ハンカチで涙を拭いてあげるんだけどそれでもとめどなく泣いている明石をどうしたものかと思っていると、そこにタイミングがいいのかしら? いや、かなり悪いわね。
なんと提督が顔を出してきた。
「明石、いるか……?」
「て、提督!? ちょっと待ってください!」
「夕張もいたか。どうした? なにやら声が裏返っているようだけど……?」
「なんでもないですよ! そうなんでも……(明石! 早く泣き止んじゃいなよ! 提督はあたしが相手してるから)」
「(うん。ごめん、夕張……)」
明石は奥の方へと入っていくのを確認して、
「もう……提督もタイミングが悪いですよ?」
「やっぱり明石に何かあったのか……?」
「あったと言えばあったんですけど、まぁ考えすぎな事ですよ。だから少しすれば平気になっていると思います。ところで提督。少しいいですか……?」
「ん? どうした?」
「はい。提督ってもし、もしもですよ? 元の世界に戻れるって言われたらどうします……?」
明石に感化されたわけじゃないんだけどあたしも少し不安に感じてしまったのでそんな事をつい聞いてしまっていた。
これでもし提督が元の世界に帰りたいとか言ったらどうしよー……?
「そうだな……この世界に来てから最初の頃は元の世界に戻りたいって思った事があるのは何回かあるけど、そうだな……今はもうそんな思いはあんまりないかな?」
「またどうして? 元の世界に帰ればこんな殺伐とした世界で苦労もする事もなく家族や知人の人達とまた一緒に暮らせるんですよ?」
「そうだけど……もう私には君達という家族が出来てしまったからな。だからもし帰れるとか言われても今更みんなを見
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