第22話『神話の時を超えて〜対峙した魔王と勇者』
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その際にアルサスの地力を把握するために資料を調べさせてほしいと、リムアリーシャはティグルに要求した。(原作2巻参照)
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もっとも、その時のティッタはまだ外つ国の人間であるリムアリーシャに僅かな警戒を抱いていたのだから、主の意向を受けてリムに鍵束を渡したときは内心穏やかではなかった。だから――資料や記録以外には一切手を付けないとの約束を付け加えて。
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――リムとしては、初めてティッタに表情を緩めた瞬間でもあったのだから。
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石炭を上回る燃料資源がアルサスで発掘されたのは、建国王シャルルがブリューヌ版図を定めてから間もないころである。当時、冬の冷厳を乗り切るだけの暖房設備は決してまともといえず、牧や断熱効果のある毛皮をたよりにするだけであった。しかし、空気を温めたり、調理をするための牧や炭はすべて『森』から賄うしかない。
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やがて訪れる『資源枯渇』に対して、この『燃料資源』をうまく利用できないか。文官たちはそう考えた。
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それは、手元の明かりを灯すカンデラの燃料を補う――
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それは、夜の疲れを労わる外灯の燃料を補う――
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それは、鍛冶産業の原泉たる炎そのものを補うと期待されていた。
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しかし、新発見の存在は、幼稚なる知識程度で容易に扱えるものではない。
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理由は、木炭や石炭のように燃焼力を制御しきれなかったからだ。ヒトが、無知のまま恩恵を受けようとした罰を、自然が与えたかのように思えて仕方がなかった。
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逃げる人々をあざ笑うかのように燃え広がる、激しい炎。
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水をかければすぐに消えると認識され、次世代の燃料と注目されていた『燃料資源』は一瞬のうちに無価値となった。
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黄金と注目されていたものが、石ころの価値しかないとわかったら、長い年月を得て次第にアルサスを離れていった。ユナヴィールをはじめとした4個所の村が現存するのは、水路によって設計された炎の迷宮を生み出すために偽装罠として構築されたからだ。
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(そうか。アルサスは昔、産業鉱山都市だったのか)
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周りを一瞥する凱の視線と、その推測。推測は憶測とすり替わり、『太古の地球』との記憶と擦り合わせていく。
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ブリューヌの土台となるフランスを先端とする西欧国を中心とした『燃える水』争奪戦――
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火を獲得し、鉄を溶かして機械文明を生み出した人類に欠くことのできない、金塊も『燃える水』に比べれば物の数ではない。世界を焼き尽くした大戦の勝利を決定づけたその言葉は、さらなる軍事産業革命を後押しするに一役買った。
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されど『燃える水』争奪戦の苛烈さの一例を挙げるならば、大戦終結後のとある油田を中心に敷かれた『商戦』である。
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