第22話『神話の時を超えて〜対峙した魔王と勇者』
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を帯び、やがて人の形を作っていく。
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ヴォルン家の屋敷を背にして、くたびれた『玉座』に居座る、黒き鎧をまといし丈夫。
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間違いない。ヴィクトール陛下に見せてもらった『写真』と同一の人相だ。
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勇者と魔王――相対する。
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「貴様が――『魔王』フェリックス=アーロン=テナルディエか」
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百獣の王――獅子王を彷彿とさせるフルセットの髭。
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長年の月日をかけて蓄えたような前髪が、魔王の眼光を引き立たせる。
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短いながらも、猛々しく映える剛髪。
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とはいえ、やはり光と影の芸術品たる写真と、躍動感あふれる実物では迫力が違う。
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そんな当たり前の凱の感想を察したのか、テナルディエは重々しく口を開いた。
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「――――流石は勇者サマ。よくご存じだ。今は魔王が生業だよ」
「ある人から『絵』を見せてもらった」
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『絵』。
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フェリックスはそれだけで絵の正体が何かを看破する。
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獅子王凱がテナルディエをとらえた視界は、それこそヴィクトール王が見せてくれた『写真撮影』に他ならなかった。
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「そうか、人の描き手を必要としない『写真撮影』。機械文明がもたらした恩恵の一つというわけか」
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皮肉とも嫌味ともとれる視線を、目の前の豪胆な男――フェリックスはちらりと脇の空を見上げる。そこには支柱の上に円鏡が強い光を放っている。凱にはまるで『屋外運動場』や『大規模工場』を彷彿とさせる、施設照明のようなものが点在していた。
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「こいつもその機械文明からもたらされた『投光照明』というものだ。そしてアルサスの財政に止めを刺した『負の遺産』の後の姿でもある」
「負の遺産?」
「……どういうことですか?」
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フィグネリアが、ティッタがそろって疑問符の声を上げる。
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「かつて、ここは『燃料資源』の原産地だったそうだ。だが、ブリューヌ建国後まもなくアルサスは搾取され、一時期廃村寸前まで立たされたのだ」
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この中で唯一アルサス出身であるティッタは目を見開いた。ティグルがヴォルン家の当主として引き継いだ時から彼女は仕えているが、そのような話は一度も聞いたことがない。
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(リムアリーシャさんはそのことを知っているのでしょうか?)
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以前、ザイアン率いるテナルディエ軍を撃退したライトメリッツ軍は、ジスタートへ飛散する火種を払う為等の理由でアルサスに駐在していた時期があった。
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