第22話『神話の時を超えて〜対峙した魔王と勇者』
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弓を嘲弄したあの『おべんちゃら』だった『口』はどこへいったのやら。
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「けれど、自分が目指している理想世界は、貴方たちと一緒だと――今でもそう信じています」
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実の父に銃の引き金を引かれた今となってもなお、ザイアンの使命はへし折れていなかった。それどころか、小さく、徐々に灯を宿したかのような渇望が生まれるのを感じ取っていた。
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「――正直、あたしにもこれと言って何ができるかわかりません」
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凱の隣に、ティッタが覗き込んだ。
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「俺たち『流星』が、志半ばで倒れた者たちから託されたものは大きい」
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ティッタはうなずく。ザイアンは小さく「はい」と答える。
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「たった千の兵力で何ができるか――何かをなすにしても不可能に近いかもしれない」
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不可能に近い――しかし、決してゼロではない。今の時代を象徴するかのような、星の輝かない夜空を見上げながら凱は語った。
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「可能性は見えないかもしれない……でもガイさん、ザイアン様、あたしは信じていますから」
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元気づけるかのような口調と言葉が、少女からもたらされた。
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「ティッタ?」
「小さくても、流星の輝きは消えない――ということを。あたしだって、『夢』をずっと見続けていきたいから」
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不思議と、ティッタの言葉に二人の青年は安堵を覚えた。むしろ、勇気づけられたような気さえした。
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テナルディエと邂逅する者と、既に決裂した者の両者にとって、救いに近いような感覚を覚えた。
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そうだ。先のことを思い悩んでいても仕方がない。自分たちにできることを、ひとつひとつこなしていくしかない。託されたものの大きさに、これから挑む時代の流れに怖気ついてしまっては、何もできなくなる。
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「だから……『勇気』だけはずっと信じています」
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そっと目を閉じるティッタの横顔は、なぜか温かさをもたらした。
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そうだった。彼女自身、ティグルを奪われ、バートランを失い、誰よりもその現実に打ちのめされていたに違いない。それなのに、銀の流星軍の中である意味、最も落ち着きを払っているのはこの少女なのではないか?
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不意に、無自覚に、知らずのうちに勇気を与えてくれるティッタこそ、本当の勇者じゃないか?
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ザイアンの瞳に光が宿る。
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「もしかしたら――ブリューヌ各地にも、オレ達と同じように考えている人がいるかもしれない」
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決意したかのような張りのある声でザイアンは言った。対して凱は静かにコクリとうなずいた。
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「きっとティグル達だって――あきらめていないはずだ」
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勇者も信じている。自分が戦友と認め、
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