第22話『神話の時を超えて〜対峙した魔王と勇者』
[4/21]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
交えることだってある。君自身が行く末を見届ける覚悟があるか――テナルディエ家の一人息子として」
?
?
テナルディエ家の一人息子――その生い立ちを思い出し、ザイアンの先天的なそばかす顔に痛みが走る。だが凱が何かを言う前にティッタが噛みついた。
?
?
「そんなの……関係ないじゃないですか!?」
「正規の軍人が組織を抜けるということは、ティッタが思っているよりずっと大変なことなんだよ。彼もそれがわかっていて、決別したはずだ」
?
?
しかし、凱も厳しい口調を崩そうとしない。
?
?
「ましてや――ブリューヌへ全面反旗を翻したのが、自分の父親じゃ……」
?
?
その選択が、どれほどの重さを帯びていただろうか?既にその答えは銀の流星軍の幕舎を訪れた時、答えは出ていたはずだ。
?
凱の懸念は当然のものだ。ディナントの戦いにおいて敵はジスタート軍だった。ザイアンにとっては単なる外交上の敵国だった相手だから、大した抵抗も感じずに戦うことができた。
?
だが、今後はどうなるかわからない。
?
混成軍たる銀の逆星軍、その中枢たる『テナルディエ軍』を敵にすることになったとき、彼は当然『故郷』と戦わなければならなくなるのだ。当人たちにとっても苦しいことでもあるが、国家独立を掲げる地位にある父親の立場を思いやればなおさらだ。また逆にこれが、ただの父親への反抗心から出た行動なら、そういう人物に安心して耳を傾けることもできまい。
?
?
「俺はこれからも君を当てにしたいと思っているし、ここでアルサスに引き返したいなら止めはしない。君の決断を尊重する」
?
?
凱があえて反感をもらうような厳しさで、ザイアンに問うた理由はわかるような気がした。
?
ユナヴィールで別行動をとったザイアンを見て、凱は彼にまだ迷いがあると察したのだろう。また、この時点で、ユナヴィールで引き返したザイアンの意志をはっきりと聞いておかなければ、自分も含め、銀の流星軍全体と共闘していくことは難しい。
?
ザイアンはしばしうつむいて考えているようだったが、やがて目を上げて凱の眼を真っ向から見返した。
?
?
「ディナント……アルサス……いえ、ブリューヌでも多くの戦争を見て聞いて、思ったことはたくさんあります」
?
?
ザイアンはぽつりぽつりと語り始める。
?
?
「今すべきこと、したいこと、しなければならないこと――何がわかったのかそうでないのか、それすらも今の俺にはわかっていません」
?
?
決してザイアンは口が達者なほうではない。と、凱は聞いて思った。逆に、その言葉は何の飾り気も誇張もない、真摯なものだと受け入れられた。
そして、ザイアン自身も心のうちで自嘲する。ディナントの野営地で一戦前にティグルとその
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ