第1話 閻魔降臨
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ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン……
是非曲直庁に終業の鐘が響わたった。
「終わったぁぁぁ〜〜」
「えいどりあ〜〜〜〜ん」
部屋の外では鬼たちであろうか、これから三日間の休みを喜び合う声が聞こえた。
緑髪の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥはその様子を見てフフッと笑いながら、自身も執務室の椅子にもたれかかり、大きめに伸びをした。
これから三日間の休み、思えば去年も一昨年もその前も、結局仕事をして終わってしまった気がする。休みとは言っても地獄の門は開けているのだし、新たに訪ねてくる霊魂もいるのだから、是非曲直庁は空にするわけにはいかない。閻魔ならなおさら、席を外すわけにはいかなかった。そもそも、休みとは言っても結局することは無いのだから、仕事をしている方が気が楽なのだ、と思っていた。いや、思い込ませていたのかもしれない。
「フフフフ、フ〜ン」
いざこれから休み、となると、堅物閻魔でさえもやはり嬉しい。片付けをしながら鼻歌が溢れてしまった。
部屋を出ると、喜びのあまりバ○リスクタイム状態になっている広間で鬼たちが踊っていた。
閻魔はこれを見咎めて
「コラ、あなたたち。何をやっているのです。是非曲直庁に務める鬼としてのプライドを持ちなさい。そう、貴方達は少し下品すぎる…」
いつもの説教が始まったが、心なしか普段よりも短めであった。
ではなぜ、今年になって休みができたのか。それは、新しい閻魔が赴任してきたからである。実は是非曲直庁の閻魔は一人ではなく、二人でシフトを組んで勤務している。管轄区を分担しているのだ。ただここ数年、前任の閻魔が引退した関係で、幻想郷管轄の閻魔は映姫一人だけであった。過剰労働気味を見て誰も閻魔にはなりたがらないし、代理の死神を立てても、疲労で卒倒してしまっていた。事実、休み前の追い込みに耐えかねた雑務担当の死神が数人、泡を吹いて倒れていた。
そんな状況であったが、映姫を気の毒に思った現世管轄の閻魔が、一人、助っ人を派遣した。それが
「あら、四季様ごきげんよう」
「あら、秤華さん。ご苦労様です」
代理の新閻魔、名を 『天荼秤華・ヤマテラム』(あまとしょうか・やまてらむ)と言う。
腰まで伸びた黒髪ロングのストレートは艶やかで、少々赤みがかかっている。大きな瞳は麗しく、全てを見透かす迫力を備えている。
背は映姫よりも少し高い。服装は映姫と同じ閻魔の制服であるが、スカートは長く、ひらひらしたレースがあしらわれている。手には浄玻璃の手鏡を持ち、その奥に湛えた笑顔は全てを抱擁する優しさを形容していた。
いかにも育ちの良さそうなお嬢様、と言った様子である。
「わざわざこんな忙しい時期に来ていただいて申し訳ありませんね…。」
「いえいえ、お気になさらずに。四季様はお疲れでしょうから、ゆっくりとされてください」
秤華は
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