一話 三人の男
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決勝戦で残ったのはレインとキョウスケだった。
「おお!また二人の対決だ!」
「大会の時と同じ展開が起きてるぞ」
「今度はレインが勝つか、それとも勇者が二連勝かー!?」
周りの注目もこの一戦に集まっていた。
「よっしゃぁレイン!あと一勝だぞ、300コインゲットするぞー!」
トールが一番興奮していた、というかうるさい。
「次は勝ちますよ」
「お手柔らかにね」
二人は肘をつけ手を合わせ腕相撲の態勢をとる。
少し緊張しているレインに対し、キョウスケは余裕そうな表情だった。大事な局面でも余裕だなんて、さすが勇者となった男だとレインは思った。
「レディ・・・・ファイッッ!!」
掛け声と共に両者とも右腕に力を込める。
初めは力が拮抗していたが、段々とレインが押していっていた。
「いけー!そこだー!空いてる手で脇を狙えー!」
「トールそれ反則だから!」
ツッコミを入れつつもレインは力を抜かない。
そして、キョウスケの手の甲が酒樽につきそうになる。
勝った、そうレインが思った次の瞬間。
「ハアッ!」
キョウスケの気合いの入った声と共に、レインの手の甲が酒樽につけられていた。レインは負けたのである。
一瞬の出来事にギャラリーも何が起こったか分からず沈黙が訪れたが、数秒後にはそれが熱狂や歓声、拍手に変わっていた。
「なんだありゃあ!?キョウスケが逆転したぞ!」
「土壇場であんな力出るなんて流石勇者だぜ!」
「レインが勝つと思っていたが、こりゃたまげたなあ」
「俺たちの・・・・300コインが・・・」
周りの男達が口々に言い、トールが落胆している中、レインは300コインを受け取っているキョウスケに話しかける。
「びっくりしたよ、あんな力があるなんて。それとも手加減してた?」
「本気でいくと言ったはずだぜ」
キョウスケはこう続けた。
「レインは腕相撲で相手を倒す時、最後にほんの少しの間力を抜いてから倒すだろ?その癖を利用して、力を抜いた瞬間に押し切らせてもらった」
その言葉にレインはドキッとした。確かに力を抜いてから相手を倒すのは腕相撲での彼の癖だ。
しかし、それは最後のひと押しをするのに力を込めるための予備動作であり、しかも力を抜く時間も量も限りなく少なくしている。
それでさえも、見破ってしまうぐらいの実力をキョウスケは持っていたのだとレインは戦慄した。
「完敗だ。また勝負しようよ」
「ああ、そのうちな」
そう言うとキョウスケはその場を去った。
「お帰りなさい、どうでしたか」
「レインはあと一歩だったんだが、まーた勇者にやられちまったよ」
「そうでしたか。それでトールは?」
「参加すらしてねえ」
「貴方って人は・・・」
トールはさっきの落ち込んでいた様子を微塵も感じさせないくらいケロっとし
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