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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第百五話 ここの所忙しかったので少し休みませんか?
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帝国暦488年2月21日――。
元帥府及び宰相府での多忙の事務のさ中、ラインハルトは一通の報告書に目を通していた。
フィオーナは彼と対面した際の記録を作成して、ラインハルトやイルーナに提出していたのだ。そこでの克明なやり取りは彼に対する憎悪の生々しさを伴って現れていた。
「読んでみろ。」
ラインハルトは報告書を読み終わっても格別表情を変えず、それを正面の相手に手渡した。相手は無言で、だが、時折ハッとするような表情を浮かべながら目を通していく。やがて読み終わった相手は顔を上げた。
「ベルンシュタインが俺に手出しをすると思うか?」
ラインハルトが尋ねた相手は、正面に座っているキルヒアイスだった。
「大いにあり得ることだと思います。」
答えは間髪入れずに返ってきた。
「これだけあからさまに記されていると、襲撃がない事の方が不思議に思えるな。」
ラインハルトの顔に浮かんだ微笑は嘲笑は全くなく、むしろ憐憫さの色を伴っていた。
「いかがいたしましょうか。会見の間に入る際に当然身体検査は致しますが、会見そのものを中止することも考えられます。」
「奴がそれで満足すると思うか?」
「思いませんが、既にラインハルト様の御身体はラインハルト様お一人の物ではありません。そのことをどうかご理解ください。」
キルヒアイスの言葉には必死さが表れていた。ラインハルトはそれには答えず、視線を外に移し、しばらく風吹き渡る冬の帝都を見ていた。朝は晴れていたが午後から雲が降り始め、気象官の予測だと雪が降るとのことであった。
「キルヒアイス。」
ラインハルトは赤毛の相棒に向き直った。
「最大多数の最大幸福は、絶対的なものではない。すべての人間に受け入れられるものがあるとは俺は思わない。だが・・・・だからと言って、少数の人間の意見を無造作に踏みにじり、聞き捨ててしまってよいのだろうかとも思う。」
キルヒアイスは途中で意見をさしはさまずにラインハルトの言葉を聞いている。
「むろん、奴がそうだというわけではない。奴自身の心にはもはや俺に対する憎悪しかない。それは感情的な物であって、俺が聴講する価値はないものなのかもしれない。だが、それを置き捨てて俺は俺の道を進むことができるのだろうかとも思うのだ。不満、不平、憎悪・・・そう言ったものを受け止めることも時には必要な事ではないのか。」
「・・・・・・・。」
「奴が襲い掛かって来ればその場で奴を処断する。だが、その前に言うべきこともあるだろうし、言いたいこともあるだろう。それを聞いてからにしたい。もっとも――。」
ラインハルトの顔に今度は冷笑がうかんだ。
「奴がそれすらもせず、俺にいきなり襲い掛かるのであれば、奴もそれまでの人間だったという事だ。・・・・だが、それではフロイレイン・ジェニファーがうかばれまい。」

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