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魔王の友を持つ魔王
§39 天地の覇者と幽世の隠者
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「私は武と方術を練り上げました。私を上回るのはお義兄様くらいのものです」

「なんでさ!?」

 駄目だ。話が進まない。この子はお義兄様とやらをいくらなんでも神聖視しすぎだ。

「幼子心にも残っております。お義兄様が圧倒的な武で村に襲来した神獣を蹴散らしていったのを。あの光景が私の原点です故に」

 食品の残骸で数多の神獣を蹂躙するお義兄様こそ武の体現者と呼ぶに相応しい物です、と結ぶ教主。黎斗の背筋に汗が一筋流れ落ちる。そういえば昔生ゴミで神獣とやりあったことが一度あったような。背骨の欠片を礫として飛ばし神獣を蜂の巣にした記憶はあるのだが、それは何分昔の話だ。

「……魚の背骨で神獣に挑んだ時?」

「あの時のお義兄様はとても素敵でございました!」

「「「…………」」」

 魚の背骨、なんて単語が出た途端、場の空気が緊張感のある物から一変した。呆れを通り越して変なものを見る目で見られていることぐらいKYな(くうきがよめない)黎斗でも察することが出来るほどに。

「ん? ……羅翠蓮様や、あなたいつごろカンピオーネに?」

「そんな他人行儀にならずとも結構ですお義兄様。羅濠でも翠蓮でも好きなようにお呼びください。……はて。詳しい時期は忘れましたが二百余年、といったところでしょうか」

 二百年くらい前。魚の骨。新年を大掃除で過ごし華麗に始められなかった、などというみっともない理由で幽世から家出した時が、確かそのくらいだった筈だ。そういえば、ツバメの巣を探しに大陸まで放浪したような……

「あー!! あの時の女の子か!!」

 立ち寄った村で遊んであげた幼女が黎斗の脳裏に浮かびあがる。微かな記憶を手繰り寄せ、じろじろと前に座る教主を観察してみれば、なるほど彼女の面影が残っている、ような気がするではないか。あの幼女、美人になりそうな風格はあったがここまでとは。

「おー!! おっきくなったねぇ」

「思い出して頂けたようでこの羅濠、感謝の極みです……!!」

 よしよし、と頭を撫でる黎斗と嬉しそうに撫でられる教主に、周囲は自分の眼を疑わざるを得ない。「え。誰だコレ?」、というのが彼女を知る者の共通認識で。

「……あれ? みなさんどうされました?」

「…………いえ。なんでもありません」

 不思議そうにする黎斗とご機嫌な教主、現実を認識できないその他と綺麗に分かれてしまう。空気の違いを感じ取った黎斗の問いに「羅濠教主がおかしい」などと突っ込む愚か者(ゆうしゃ)がいる筈もなく。

「……まるで借りてきた猫ですな」

 甘粕のそんな一言が、いやに虚しく部屋に響いた。





「それでですね! 雪の……」

 最初はどうなることかと思った教主と黎斗との会談は途中
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