巻ノ百二十一 天下人の器その十一
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「そのうえで本朝をも」
「乗っ取ろうとじゃな」
「してもきます」
「だからじゃな」
「どうしてもです」
「幕府も認めぬが」
「茶々様はそうではなく」
それでというのだ。
「明石という者も」
「よいとじゃな」
「言われまして」
大坂城の実質的なかつ絶対の主である彼女がというのだ。
「それで、です」
「決まったか」
「はい」
そうだというのだ。
「その様に」
「そうであるか」
「これもです」
「危ういな」
「はい、切支丹を認めるとのことで城に入ってもらいますが」
「しかしな」
「それがです」
まさにというのだ。
「幕府にとってはです」
「絶対に認められぬこと」
「ですから」
それでというのだ。
「どうしてもです」
「明石という者はか」
「城に入れるべきではないですが」
それでもというのだ。
「それがし達がそう思っても」
「それでも母上がな」
「決められましたので」
「そうなったか」
「はい、こうなっては」
どうしてもというのだ。
「どうしようもありませぬ」
「母上を余も誰も止められぬ」
秀頼は難しい顔のまま言った。
「それ故にな」
「この様にです」
「なっておりますし」
「どうしようもです」
「そうじゃな、そして最早こうなっては」
どうしてもというのだ。
「どうしようもないな」
「戦です」
「それが避けられませぬ」
「こうなっては」
「そして戦になれば」
「勝つしかないな、では待とうぞ」
その戦の時をだ、こう言ってだった。
秀頼は大坂の状況を見ていた、民達はとにかく必死に逃げようとしていた。その為の準備に勤しんでいた。
秀頼はそれを見て苦しいものを感じていたがだ、それでも。
今は仕方なくだ、戦の用意をさせていた。そしてだった。
兵達もだ、こう話していた。
「いよいよじゃな」
「戦じゃな」
「そうじゃな」
「はじまるのう」
「そうじゃな」
こうした話をしていた。
「いよいよな」
「その時じゃな」
「間もなくな」
こう話していた、そしてだった。
戦の時は近付いていた、それはもう間もなくだった。
巻ノ百二十一 完
2017・9・1
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