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ジンベエザメの心
第三章

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「お陰で海遊館は見違えるまでによくなったって」
「そやねんな」
「それでだけれど」
 ここで言葉を一旦止めてだ、市長は海雄にあらためて声をかけた。
「海遊館の人達からお礼がしたいってね」
「お礼?そんなん別に」
「いらないんだね」
「ええよ、そんなん」
 一行にと返す海雄だった。
「別に」
「皆そう言うね」
「大阪二十六戦士はやね」
「ロートさんは報酬要求するけれど」
「あくまで要求出来る相手だけで」
「自分からどんどん動いて」
 そしてというのだ。
「払うことが出来ん人には絶対に要求せんし」
「あくまで要求出来る相手だけで」
「そや、大阪二十六戦士は何の為に戦ってるか」
「大阪の街と市民の人達の為に」
「そやからおいら達の報酬はな」
 それは何かというと。
「笑顔や」
「大阪の人達の」
「それは市長さんも同じやろ」
「当り前だよ、僕は大阪の市長だよ」
 市長は海雄に毅然とした顔で答えた。
「それならだよ」
「一番の報酬はやな」
「笑顔だよ」
 海雄と同じことを言った。
「それだよ」
「そうや、それでや」
 まさにと言うのだった。
「おいらもやからな」
「報酬はいいんだね」
「全然な、それでやけど」
 ここでさらに言う海雄だった。
「今度の恵比寿祭りな」
「ああ、海雄さんお祭り大好きだよね」
「特に住吉さんのな」
 この大社の氏子だけあってだ。
「あれが一番好きや、それでもな」
「恵比寿祭りも他の祭りも」
「大阪の祭りやったら」
 それこそというのだ。
「何でも好きで出店の食べものも」
「君の大好物ばかりで」
「楽しみや、ほな市長さんも他の二十六戦士もな」
「皆で恵比寿祭りに出て」
「楽しもうな」 
 海雄自身笑顔であった、そうしてだった。
 海雄は海遊館の人達とそこにいる生きもの達、その彼等を見に来るお客さん達の笑顔を受け取ってだった。彼自身笑顔で今日も大阪の為に働くのだった。


ジンベエザメの心   完


                  2018・1・25
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